長年連れ添った夫が、銀座のスナックのママと7年間月に2回密会し、肉体関係も持っていた…。これを「不倫」として訴えた妻に対して、「枕営業も営業活動」とする驚愕の判決が下った。
この騒動に異論を唱える著名人も多い。社会学者の上野千鶴子氏は、開口いちばん「法の下の平等」に反すると話す。
「どんな人であれ、法の下では個人として平等に扱われるべきなのに、この裁判官は、“素人女性との性交渉は不倫だが、玄人女性との性交渉は不倫にあたらない”と女性を区別したんです。これを二重基準、女の使い分けといいます。完全に不当判決ですよ」
そう裁判官を批判した上野氏。その一方で、この“男性目線”が問題になるのには、世の女性の受忍限度の変化に原因があると指摘する。
「今から30年ほど前までは、男性の女性に対する区別を、女性も共有していました。夫が浮気する相手は、素人なら許せないが、玄人なら許せるという男性と同じ考えを持った女性たちがいたんですね。
それが近年、女性が権利意識をもったこともあり、男性の一方的な視点への受忍限度が下がったことで、こういった問題が可視化したんです。
セクハラやDVだって、昨日今日始まったわけじゃない。男性は昔から同じことをしているだけ。ただ“もう我慢できない”と女性側に変化があったから取り沙汰されるようになったんです」(前出・上野氏)
漫画家でエッセイストの柴門ふみ氏も、上野氏が指摘した“二重基準批判”に賛同した上でこう話す。
「一般人とホステスを区別したのも問題ですが、それ以前に、ソープや風俗店で働く女性が相手だったとしても、貞操の義務に反し不貞行為になると思います」
女性に対する“線引き”に大きな問題があると指摘し、こう続けた。
「私は、体がなじめば心もなじむと思うんです。7年にもわたって、月に2回性交渉をしているのに、それでも“単なる営業活動”というのには無理があります。妻側としては、心も体もママとなじんでいる夫に対して信頼が揺らいでるわけですよね。
精神的な信頼が乱されているということは、充分結婚生活を害していることになります。おそらく裁判官は、“男は生活費さえ入れていれば、結婚生活を乱したことにならない”というような、時代錯誤な考えも持っているんでしょうね」
※女性セブン2015年6月18日号