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朝井リョウ氏 ASAYANに出るギラギラした人達にスッキリした

【著者に訊け】朝井リョウ/『武道館』/文藝春秋/1404円

【あらすじ】アイドルグループ『NEXT YOU』の目標は「武道館でコンサートをする」こと。そのひとり、オーディションで完全な素人からメンバーに選ばれた高校生の愛子は、ただ歌って踊ることが好きな子だった。それなのに――恋愛禁止を言い渡され、別のグループの握手会では事件が起き、ネットには匿名での悪口が溢れている。そうした周囲に揺れ惑う少女たちの本心を、愛子を通してリアルに描いていく。

 アイドルグループの一員として武道館でのライブをめざす少女を主人公にして、描きたかったのは「現代の消費者側の精神性」だという。  
「綺麗じゃなきゃいけないけど、恋はしちゃだめ。歌とダンスが仕事なのに、上手過ぎると応援されない。両立できないものを両立しろと要求され続けているアイドルは、現代の消費者の精神性を反映している存在だと感じていて。つまりアイドルを主人公にすることで、逆に、私たち消費者のことを描けるのでは、と」

 デビュー作で、映画もヒットした『桐島、部活やめるってよ』は「スクールカースト」を、直木賞を受賞した『何者』は「就活」をリアルに描いた、と話題になった。朝井さん自身が意図しなかった部分が大きく取り上げられ、社会現象化していったことを、「今となっては悪いことではなかった」と振り返る。

「この本もそうであってほしい。『この感覚は私にはない』って人もいれば、『自分が思ってたことだ』という人もいて。発売1か月ですでに、賛否両論を感じています。『共感しました』、というだけで終わる作品にならなさそうでよかった」

 アイドルを書くうえで原点にあるのは、小学生のとき、夢中になって見たオーディション番組『ASAYAN』だという。

「日本って謙遜の文化じゃないですか。学校はとくに個性を消さなきゃいけない場所だったので、『ASAYAN』に出てくる『絶対、有名になる』ってぎらぎらした人たちは衝撃的で、どこかすっきりしたんです」

 今回は、ヘアメイクやマネージャー、イベント会社の人などアイドルの周囲で働く人には話を聞いたが、「印象が強くなりすぎるので」、アイドル自身にはあえて話を聞かなかったそうだ。

 雑誌の企画で対談したAKB48の総監督高橋みなみは、先日のライブの挨拶で、自分の選択を正しかった選択にしていくしかない、というこの本の1節を引いてくれた。

「人づてに聞いて、驚きました! すごくうれしかったですね。ぼく自身、本を読んでいて楽しいのは『これから先、いろんな場面で思い出すだろうな』という一行に出会うこと。そういう言葉を生みたいと思って書いた、まさにその部分だったので」

 朝井さん自身も、3年勤めた会社を4月末で退社するという大きな選択をしたばかりだ。

「辞めてよかった点は、平日に書店回り等の販促活動をできるようになったこと。悪い点は、集中力が落ちたことです。前は2時間でできたことが今は4時間かかります。やはり人間は追い詰められないと全力を出せないのかもしれませんね(笑い)」

(取材・文/佐久間文子)

※女性セブン2015年6月18日号

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