13万人の大観衆が見守る中、圧倒的な強さで第82回日本ダービー(5月31日、東京芝2400メートル)を制したドゥラメンテ。皐月賞に次ぐ二冠制覇をレースレコードで成し遂げた。
春の二冠を制したのは2011年のオルフェーヴル以来4年ぶり。競馬ファンならずとも気になるのが、この先の「進路」だ。
二冠馬は秋の菊花賞(10月25日、京都芝3000メートル)に出馬し、生涯一度のチャンスである三冠をめざすのが王道だが、一方で世界最高峰レースである凱旋門賞(10月4日、仏ロンシャン芝2400メートル)への挑戦を望む声も高まっている。厩舎関係者の話。
「昔は二冠を取れば菊花賞に挑戦するのが当たり前だったが、スピードが重視されるようになった最近の競馬では、三冠のステイタスが下落気味です。もともと三冠は競馬の本場イギリスのレースを真似したものだったが、そのイギリスでも、日本の菊花賞にあたる『セントレジャー』(芝約3000メートル)に出ない馬が増えている。菊花賞を落とせば、これまでの栄光に傷が付く。ドゥラメンテのダービータイムはあのディープインパクトよりも速く、“世代の頂点としての格付けはもう十分”との意見も多い」
3000メートルという長丁場の菊花賞は馬体に過度の負担がかかる。ソングオブウインド、ビッグウィークなど、菊花賞を取った後に成績が振るわず、故障で引退するケースが多いことも事実である。さりとて過去7頭しかいない三冠馬の称号もやはり魅力的だ。
対する凱旋門賞も「3歳馬こそ挑戦すべき」といわれる。
「凱旋門賞で4歳以上の牡馬は59.5キロの斤量を背負わされるのに対し、3歳牡馬は56キロと圧倒的に有利。2連覇中の牝馬・トレヴは強敵だが58キロを背負ううえ、ピークをすぎているとも見られている。右回りのロンシャン競馬場は左手前を得意とするドゥラメンテには格好の舞台。最後の直線で“異次元の末脚”を発揮し、先行馬をぶっちぎった皐月賞のようなレースが期待できる」(競馬担当記者)
ドゥラメンテの生産者・ノーザンファームは海外に強く、アドマイヤムーン、リアルインパクトなど海外レースの勝ち馬が多い。いまや三冠より凱旋門賞勝利を願うファンが多いことも確かだ。
「ディープインパクトやオルフェーヴルなど過去の三冠馬が勝てなかった凱旋門賞制覇は日本ホースマンの夢であり、勝てば日本競馬の歴史が変わる。チャンスがあるなら挑戦してほしいという声は多い」(同前)
ドゥラメンテの意味は音楽用語で「荒々しく、はっきりと」。この秋、その名の通り荒々しく駆け回っているのは、京都なのか、ロンシャンなのか。
※週刊ポスト2015年6月19日号