全仏オープンに出場した錦織圭は、準々決勝でJ.W.ツォンガ(フランス)に、2-3のフルセットで敗退。惜しくもベスト4進出を逃した。
とはいえ、日本人選手として82年ぶりの全仏ベスト8は見事の一言だ。海外の選手に比べ、錦織はこれまでクレーが苦手だといわれてきたが、なぜ結果を残せたのか。日本テニス協会ナショナルチーム男子ヘッドコーチの増田健太郎氏が解説する。
「球速が遅いクレーではラリーが続きやすく、どちらかといえばコートの後ろにポジションを取ってディフェンシブに戦うスタイルが定石とされてきた。しかし、今大会で圭はボールがバウンドして地面から上がってくるタイミングに素早く入り込み、ディフェンスしつつも速攻で攻撃していくスタイルを築くことができた。相手に立て直す時間を与えないコンパクトなテニスをできるようになった点が大きな進歩だと思います」
きっかけは、全仏と同じくクレーコートで行なわれる昨年5月のマドリードオープンだった。決勝戦でR.ナダル(スペイン)と対戦。結果は腰の負傷による途中棄権で準優勝に終わったが、内容ではクレーの絶対王者を圧倒できた。そこから自信をつけ、その後の進化につながったという。
マイケル・チャンコーチの精神的な面での影響も大きいと増田氏は続ける。
「初めてコーチを受けた時、『前夜に焼肉を食べたことを怒られた』と圭がいってました。トップ選手にそこまでいえるほど実績のあるコーチは少ない。才能がありながら若干、自分に甘い面もあった圭にはピッタリの厳しいコーチです」
一方、今回の敗因は出だしの不調に加え、最後まで相手の体力を奪えなかったことだと増田氏は分析する。錦織の次戦は今月29日から始まるウィンブルドン選手権となるが、そこへ向けての注意点は何だろうか。
「課題は試合後、錦織自身が的確に分析している通り集中力と冷静さです」(スポーツ記者)
今回も前半で集中力のないサーブでミスが目立った。看板の落下による試合中断で冷静になり救われた。
「ウィンブルドンは芝のコート。サーブの威力が増すため昨年敗れたM.ラオニッチ(カナダ)のような芝を得意とする超ビッグサーバーには注意が必要です。ただ圭はリターン力が増してきている。サービスコントロールも上がってきていますので、優勝のチャンスは十分にありますよ」(増田氏)
※週刊ポスト2015年6月19日号