国内

労働者派遣法改正巡る論戦 現場を知らぬ国会議員のたわごと

 3度目の正直とばかり、昨年、二度も廃案になりながら労働者派遣法改正案が提出されている。成立を目指す政府・与党と廃案にしたい野党の間で論戦が繰り広げられているが、大前研一氏はそれらを戯言だと断じている。なぜ、国会議員たちの論戦がピントが外れたものになっているのか、大前氏が解説する。

 * * *
 後半国会で安全保障関連法案と並んで焦点の一つになった「労働者派遣法改正案」の審議が進んでいる。昨年の国会で二度廃案になって再々提出された、曰(いわ)く付きの法案だ。

 そのポイントは、現行制度では通訳や秘書などのいわゆる「26業務」以外の業務には最長3年の期間制限がかかるが、これを廃止して「派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受け入れは3年を上限とする。それを超えて受け入れるためには過半数労働組合等からの意見聴取が必要。意見があった場合には対応方針等の説明義務を課す」「派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受け入れは3年を上限とする」というものだ。

 これを野党は「一生派遣法案」「正社員ゼロ法案」と批判し、三たびの廃案に追い込む構えだという。対して政府・自民党は三度目の正直で早期成立を目指し、安倍晋三首相も「計画的な教育訓練を新たに義務付けるなど、派遣労働者のキャリアアップを支援する」と強調している。

 だが、派遣社員を減らして正社員を増やすことがすべていいことだという発想は、企業経営の実態やビジネスの現場を全く知らない国会議員たちの戯言だ。

 ボーダレス経済の中で企業が富を創出して(=利益を出して)生き残っていくための要諦は「世界最適化」である。つまり、

■世界で最も良質で安価な原材料を調達
■世界で最もスキルがありコストが安いところで生産
■世界で最も高く売れるマーケットで販売

 という最適解を探らねばならないのだ。そして、それを達成するためには、設計、開発、購買、製造、営業、サービスなどすべての機能が時間の関数、すなわち為替レートや賃金の上下などによって変化する「従属変数」となる。ということは、人=社員も変数になるわけだ。それらをどのようにミックスして収益を最大化するかを考えるのが経営なのである。

 したがって、もし日本国内で「人」に柔軟性が持てないとなれば、その機能は別の国に移さねばならなくなる。つまり、派遣労働者を減らして正社員を増やすというのは、企業戦略から見ると、最も間違った政策なのである。

※週刊ポスト2015年6月19日号

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