横浜DeNAベイスターズがセ・リーグの首位争いを続けている。快進撃の理由として、4番の筒香嘉智ら攻撃力の陰に隠れがちだが、投手力の向上も見逃せない。
『プロ野球なんでもランキング』(イースト・プレス刊)などの著書があり、プロ野球データに詳しい広尾晃氏に依頼してデータ分析をしてみたところ、投手力が上がっていることがわかった。
「QS数」(クオリティ・スタート=先発投手が6イニング以上を投げ、かつ自責点3以内に抑えた回数。QS値が高いほど先発投手が安定していることを示す)、「SV/HLD」(セーブ、ホールド)をみると、過去5年とはまったく異なる数値が算出された。これまで横浜はQSが60だった2013年のように、得点効率が良くても投手陣が打ち込まれて負けるというパターンが多かったが、2014年はQSが76で先発陣がふん張れるようになっている。
「先発ローテーションが3枚しか固定できなかったのがこれまで苦戦してきた原因。今年は久保康友、山口俊、井納翔一、三嶋一輝の先発4本柱が固まり、5番手に三浦大輔が収まりそうです。143試合換算(6月3日現在の成績をもとに換算。以下データは同様)では久保と山口が8勝、井納と三嶋が10勝、三浦が8勝になります」(広尾氏)
先発の力はようやく他球団に追いついたといったところだが、ブルペン陣は他を圧倒している。信頼感抜群のセットアッパー・田中健二朗と絶対的なストッパー・山崎康晃のコンビが登場したことは今季の大きなプラス要素だ。
「143試合換算で田中は36ホールド、山崎は49セーブを挙げる。元々打線は良かった横浜にとって、快進撃の最大の理由はこの2人にあるといえます」(広尾氏)
1998年、38年ぶりに横浜を日本一に導いた元監督の権藤博氏もその分析に頷く。
「筒香を中心にした打線が目を引きますが、やはり抑えが確立できたことのほうが大きいと思います。山崎の活躍は、1998年の大魔神(佐々木主浩)に匹敵する。本当に強いチームは、勝ちゲームをひっくり返されず確実に勝ち切るものです」
今年の横浜には、リードされた試合を逆転でモノにする力もある(32勝のうち17試合が逆転勝利)。
「強力打線といってもノーガードで殴り合っていては勝てない。マシンガン打線といわれた1998年だって、相手の攻撃をしのいでいるうちに打線が爆発して勝つことが多かった。今もその勝ち方ができている。最近では6月2日のソフトバンク戦。終盤まで劣勢だったが、投手陣が耐えていたら8回に3点を取って逆転し、そのまま逃げ切った。そうした勝ち方はチームに勢いをもたらします」(権藤氏)
※週刊ポスト2015年6月19日号