年金の個人情報流出問題が発覚した6月1日当日。霞が関中央合同庁舎5号館の8階に入る厚労省年金局では、こんな“個人情報悪用対策”が大真面目に話し合われた。
「もし流出対象者を名乗る人が申請窓口に来たら、担当者の端末の画面のどこかがピコピコ点滅して注意喚起するようにすればいい」
これは「漏洩対策」ではなく「クレーム対策」だ。こんな年金役人だから、今回の問題は起こるべくして起きたといえる。
125万件という公的機関としては最大規模の情報流出が起きたというのに、情報を漏らした張本人たちに緊張感はない。
安倍晋三・首相は、「国民の大事な年金だ。受給者のことを考え、万全を期すように、塩崎(恭久)厚労相に指示した」とごく当たり前のことを語り、その塩崎氏の会見は、まるで評論家。当事者意識などまるでないのだ。
「このような個人情報が大量に出たということは、悪意ある不正アクセス、攻撃であったとしても、大変残念なことであるところでございます」
「真相究明を徹底的にやります。年金が万が一にも被害を受けないようにすることが我々の使命ですから」
その上で日本年金機構職員の処分については、「まず真相究明が大事」(塩崎氏)と逃げた。
2004年、本誌が小泉純一郎・首相(当時)の年金未納問題をスクープした際には、本誌の発売3日前に秘書官が会見を開き、情報が出たことについて「しかるべき措置を講じたい」と憤った。さらに当時の坂口力・厚労相も「漏洩があるなら厳然と処分する」と“迅速な対応”を見せていたのとは大違いだ。
※週刊ポスト2015年6月19日号