日本人の9割以上が、一度は悩まされるという「腰痛」。いったん発症すると、慢性的になって治りにくいイメージがあるが、研究や実験により、昨今では痛みのしくみがわかるようになってきた。
脊椎外科専門医として、五輪代表選手をはじめ、さまざまな腰痛患者を診てきた早稲田大学スポーツ科学学術院教授の金岡恒治さんは言う。
「レントゲンやMRIで異常が見えない腰痛は、“原因不明”とされるのが実情です。しかし、すべての腰痛には原因があり、痛いと感じる部分や痛みの種類は、原因によって異なります。腰痛の出どころは大きく4つ(※注:後述)に分けられますが、簡単な動きや指圧で痛みをチェックすることで、原因を探ることもできるのです」
しかも、痛みの理由やしくみがきちんとわかれば、腰痛が軽減することが多いという。
「正体がわからないと、人は不安やストレスを感じます。気分が憂鬱になれば脳で痛みが増幅され、実際以上に強い痛みを感じてしまう。痛みが強くなると体を動かすことが困難になり、筋肉が衰える。すると、背骨に負担がかかりやすくなって、ますます腰まわりに機能障害が 生じ、痛みを招く。こうして負のスパイラルに陥ってしまうのです」
なるほど、原因を知ることは、痛みから解放される第一歩となるのだ。
※注
◆4つの腰痛タイプ
【椎間板タイプ】
腰椎と腰椎の間にある軟骨=「椎間板」が原因の痛み。正常時は椎間板に神経は通っておらず、内部が多少傷ついても痛みは出ないが、加齢などにより水分が減ると内側に血管や神経が入り込むため、椎間板を圧迫するような動きをすると痛みが発生する。
【椎間関節タイプ】
背骨同士をつなぐ「椎間関節」が原因の痛み。椎間板がつぶれた二次被害で痛みが出ることが多い。本来は椎間板と椎間関節で背骨を支えているが、加齢で椎間板の弾力性が失われると次第に椎間板がつぶれて椎間関節への負担が増加し、椎間関節に障害が起こる。
【仙腸関節タイプ】
骨盤にあり、腸骨と仙骨をつなぐ「仙腸関節」が原因の痛み。可動域が狭く、些細なことでズレが起きやすい。ズレたところに負荷がかかると、神経が異常を察知して痛みが引き起こされる。女性に多く、特に出産後の腰痛の多くは仙腸関節が原因と考えられる。
【筋肉タイプ】
背中にある「脊柱起立筋群」という筋肉が原因の痛み。ここに慢性的な負担がかかることで筋肉が疲労し、痛みが生じる。上記3タイプの二次的な痛みとして出る場合も。また、筋肉疲労ではなく、脳の勘違いがもとで筋肉が収縮して痛みが起こるケースもある。
※女性セブン2015年6月25日号