「信じられなかったです。彼女はいちばん信頼していた人で、娘も本当に懐いていたのに…」。ベビーシッターによる窃盗被害に遭った神田うの(40才)は、6月2日の会見で、涙を流しながらこう語った。
うのが最初に異変に気づいたのは2013年春のことだという。旅行に持っていこうとした時価約200万円のエルメスのバーキンがなくなっているのに気づき、改めて捜してみると、エルメスのケリーバッグやルイ・ヴィトン、シャネルのバッグなども紛失していることがわかった。さらに宝石類や腕時計なども見当たらなくなっており、紛失した物は計70点にのぼり、時価にして3000万円を超えるという。
うのは2014年1月、警察へ被害届を提出。捜査の結果、同年11月に逮捕されたのは、うのが雇っていたベビーシッター(60才)だった。逮捕時、彼女は盗んだもののほとんどをすでに質店に売り払い、換金していたという。今年4月に懲役2年の実刑判決が下り、現在は控訴中だ。
過去、芸能界ではベビーシッターをめぐる事件やトラブルが何度も起きている。1964年8月には高島忠夫(84才)・寿美花代(83才)夫妻の当時生後5か月の長男・道夫ちゃんが、湯船の中で、変わり果てた姿で発見され、犯人は元宝ジェンヌの寿美のファンで、半年ほど前から高島家でお手伝いとして働いていた17才の少女だった。
1999年には研ナオコ(61才)が、当時11才だった長男が、ベビーシッターに3年間にわたって虐待されていたことを告白している。この一件を機に、研は仕事よりも家庭中心の生活に切り換え、コンサートなども一切やめて子供の行事を優先するようになったという。
また、2012年には元オセロ・松嶋尚美(43才)が、当時3か月だった長男のベビーシッターを、ブログで写真付きで紹介。すると、そのシッターを知る人物から、女性セブンにこんな声が寄せられた。
「あの人は、うちの近所で噂になっているゴミ屋敷のような家の人なんです。余計なお世話かもしれませんが、本当に、この人に赤ちゃんをまかせていいのかと心配で…」
さらに取材を進めると、彼女はかつて働いていた職場で金銭トラブルを起こして辞めさせられていた事実も発覚したのだった。
今年5月9日には、パリ在住の元フジテレビアナウンサー・中村江里子(46才)がブログで、ベビーシッターに現金や宝石を盗まれたことがあると告白している。
2014年3月には埼玉県富士見市で、26才の男性シッターが、預かっていた2才の男児を虐待の末に死亡させるという事件が起きている。他にも、ご飯を食べないといって子供を怒鳴る、泣き出すと叩くなど、シッターによる虐待事例は後を絶たない。教育評論家の深谷昌志氏が語る。
「子供の世話をする職業にもかかわらず、ベビーシッターには国家資格も必要なく、自治体への届け出の義務もありません。民間の資格を取得している人もいますが、なくてもかまわない。つまり、誰にでもなれる職業なんです。そのため、各シッターがどんな育児サービスをしているのか、行政によるチェックもなされていないのが現状です」
さらに、インターネットの仲介サイトの場合、偽名でもシッターになれる。先の富士見市の事件は、まさにこのケースだった。
トラブルが多発するベビーシッター業界だが、それでも母親たちは、子供を預けざるをえない実情がある。現在、都心の保育園などはどこも満員で、待機児童が溢れている。生活のために働きに出なければならない母親には、へビーシッター以外の選択肢がないのだ。
「だからこそ、誰に依頼するかは非常に重要です。地域社会のネットワークを使って、顔見知りのかたを紹介してもらうなど、知らない人は極力さけるようにしましょう」(前出・深谷氏)
※女性セブン2015年6月25日号