今、ひとつの情報サイトが注目されている。事故物件サイト「大島てる」。世界地図に炎マークがついて、「事故物件」のある場所がわかるようになっているのだ。
記者の自宅周辺地図にも炎マークがいくつかあったのでクリックしてみると、「○年○月、飛び降り自殺」などと記載され、アパートやマンションの名前と部屋番号まで特定されていた。なかには「あのアパートで、そんなことが…」と驚いた情報もあった。
サイトを運営しているのは「大島てる」というインターネット関連会社だ。
「日本国内で約2万1000件、アメリカやヨーロッパなど海外も含めると2万8000件ほど掲載しています。最初は当社で情報を集めていましたが、現在は皆さんに情報を提供してもらって公開し、間違いがあれば指摘していただき、削除や修正を行っています」(同社会長の大島てるさん)
「事故物件」とは不動産業界用語だが、明確な定義はないという。
「簡単に言えば、敷地内で人が死んだ物件です。殺人、自殺、火事での死、孤独死で発見が遅れた場合も、そう言えるでしょう」(大島さん)
そうした物件だと知っていれば居住しないなどの可能性がある。そのため不動産の売買や賃貸契約の際には、「重要事項」として買い主や借り主への事前告知が義務づけられている。物件の広告に「告知事項あり」とあったら、事故物件の可能性がある。
告知義務を怠ると、宅建業者は損害賠償を請求されたり、行政処分を受けたりすることになる。
昨年6月には、全国チェーンの不動産仲介業者が、福岡市内の2件のマンション物件を、前の入居者が自殺したことを言わないで、新たな入居者に賃貸していたことが判明。入居者に謝罪した。システムへの物件情報の未入力が原因だったというが、なかには意図的に告知しない悪質なケースもあるようだ。
「法令上の明確な線引きがなく、どこまで告知するかは大家次第のところがある。裁判沙汰になれば負けるとわかっていても、殺人があったことを告知しない大家もいるほどです」(大島さん)
また、敷地内や共有スペースで起きた事故については、基本的に告知義務は発生しないとされている。マンションの屋上から投身自殺をしたり、共用廊下で殺人事件が起きたりしていても、契約時に教えてもらえないかもしれないのだ。
告知義務があるのは「次の入居者」までで、その次に入居する人には「告知しなくてもいい」というのが、不動産業界では通例になっている。
「8年ほど前に東京で、自殺した住居者の連帯保証人を大家が訴える裁判がありました。『自殺によってアパートが傷モノになり、他の全部の部屋も値下げしなければならなくなった、だから家賃を弁償しろ』というわけです。東京地裁は、弁償の義務があるのは『自殺のあった部屋だけ』『告知しなければいけない入居者は1人目まで』という判決を下しました。この結論だけが不動産業界に伝わったんです」(大島さん)
遺族に配慮した判決が、不動産業者にうまく利用されている…。しかもこのルールを悪用して「事故物件ロンダリング」をする業者もいるという。
「アルバイトを雇って短期間だけ事故物件に住まわせる。そうすれば次の入居者にはもう告知しなくていいというわけです。しかし、アルバイトを雇うにはお金がかかるので、そもそも何も言わない悪質な業者が圧倒的に多いのです」(大島さん)
※女性セブン2015年6月25日号