今年3月、京都市で野良猫などへの不適切な餌やりを禁止する条例が成立し、7月1日から施行される。見知らぬ人の餌やりにより自分の敷地に猫が住みついて困っている場合、どうやって餌やりを止めさせれば良いのか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
自宅の裏手の破棄された工場に野良猫が住みつき子猫を産みました。見知らぬ人が猫に餌をやっているので注意をしているのですが、止めてくれません。風向きによっては猫の臭いが部屋に入りますし、衛生的な問題も心配です。猫が居つく前に、どのような対処を取れば餌やりを止めさせられるでしょうか。
【回答】
餌付けされた猫が近所に迷惑をかけ、その程度がひどい時は、給餌行為が不法行為となり、損害賠償請求や中止要求も可能です。
商店や住宅の混在する街で、猫好きの住民が家の前で捨て猫に餌をやりはじめ、徐々に野良猫が増え、近所の家の建物内や敷地内に入り込み、周辺に糞尿をして悪臭を放ち、強い不快感を与えたことが問題になった事件がありました。
裁判所は、猫好きの人の嗜好に基づく行動の自由を尊重しつつ、他方には猫、とくにその糞尿等による臭いを嫌う人も多くいるので、社会生活を営む上で、他人に不快感を与えないようにする配慮も必要としました。
そして、近所に猫嫌いの人がいて、野良猫に餌を与えることで野良猫が集まり、その結果、野良猫の糞尿で猫嫌いの人が大きな不快感を味わっていることがわかった時には、野良猫への給餌を中止すべきであって、給餌を続けるのは違法であり、不法行為になると判断しました。
餌をやっている人に、臭気がひどい事情を確認してもらい、給餌の中止を求めるのがよいでしょう。とはいえ、野良猫は無責任な飼い主による犠牲です。寿命が短いので不妊手術をして数の減少を図り、トイレを決めて糞尿被害を抑え、餌やりの片づけをきちんとし、カラスや虫などがたからないようにするなど、地域で協力して解決するのが望ましいと思います。
また、京都市で野良猫への給餌を禁止する条例を制定したことが話題になりました。条例では不適切な給餌を禁じ、違反して周辺の住民の生活環境に支障が生じている場合には、必要な措置を勧告し、応じない時は実行を命じ、従わなければ5万円以下の過料を課することにしています。こうした条例がなくても、役所の衛生環境や保健を扱う部署に相談するのも方法のひとつです。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2015年6月19日号