50才までに一度も結婚したことのない「生涯未婚率」は男性20.14%、女性10.61%。30年前に比べ て、女性は約2倍に増加している。「結婚氷河期」という名のとおり、大人になれば当たり前のようにすると思っていた結婚のハードルはどんどん上がってきているようにも見える。
「自分の子育てが間違っていたのか」…本人次第とわかっていても、子供の幸せを願うとついつい心配してしまうのが親心。娘が独身だからといって一概に子育てが失敗したと思わないでほしいと語るのは、作詞家・ラジオパーソナリティー・コラムニストのジェーン・スーさん(42才)だ。
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私は24才のときに母親を病気で亡くし、父親と2人家族になりました。父親は「あなたが幸せならそれでいい」という放任主義だったため、若い頃から結婚のプレッシャーは少なかったです。ただ、社会からの「結婚してこそ一人前」という無言の圧力はひしひしと感じていました。
それもあって30代半ばまでの頃の私は、結婚は世間に一人前と認めてもらえる「勲章」だと思っていました。当時は一発逆転で結婚というメダルを得ようとして、相手にもそれなりのステータスを求めていた。実にわがままな女でしたね。
さらにちょうどその頃、レコード会社から眼鏡会社へ転職して、仕事が一気に面白くなり、結婚の優先順位がどんどん下がっていったんです。結婚しなきゃと思っているのに、どこかで結婚して自由を奪われたくない気持ちもありました。
「女の幸せ=結婚」だった親の世代とは世の中が大きく変わりました。女性の社会進出が進む一方、終身雇用が崩壊して、男性の収入が伸びないどころか職も危うい。それなのにいまだ「子育ては母親がするもの」という風潮が根強く、出産・育児と仕事の両立は簡単とはいえません。出産を強く望むかたを別にすれば、社会に出て個人の幸せを追求したい女性にとって、結婚するメリットが少なくなりました。
実際に私のまわりでも仕事と子育てを完璧に両立しているのは一握りのスーパーウーマンのみ。他は綱渡りのような生活を続けています。
なかなか結婚しない娘を心配する母親にぜひ伝えたいのは、娘が長く独身だからといって、子育てに失敗したわけではないことです。母親が失敗だと結論づけると、娘は自分自身のことを「そうか、私は失敗作なんだ」と思い込んでしまいます。
学業や就職などで親の言うことをよく聞いてきた真面目な娘ほど、結婚という親の期待に応えられないことをつらく感じ、後ろめたく思っています。親を不幸にするために独り身を貫く娘なんていないと声を大にして言いたい。
それに「結婚しないと娘は幸せになれない」、「独身は先行き不安だ」という母親の信念が強すぎると、娘は親に近寄ることすら億劫になり、より疎遠になって しまいます。親に「まだ結婚しないの?」と急かされたからと交際相手をつつき、逆に関係が悪化した経験を持つ女性は多いはずです。
干渉のしすぎはよい結果 を生みません。もしも機会があれば、母娘で温泉旅行でもして、ゆっくりと話し合ってみてはいかがでしょうか。
そういう私自身、昔は結婚することで親を安心させようと思っていました。でも、その手段は実は結婚に限らないと気づいたんです。しっかり働き、女ひとりで 自活できることを証明するのも一つの手。頑張って貯金をして、老後に備えることも親を安心させる立派な手段になりうるのです。
何より大切なのは、日々を楽しく生きること。未婚でも娘の楽しげな姿を見れば親は安心できるはずです。そんな娘の思いを親には知ってほしいと思います。
親は何かと娘の老後を心配するけど、女性は横のつながりが強いので、女同士、困ったときは助け合えるし、愚痴を言い合ってガス抜きもできる。「互助会能力」が高いから、老後も助け合って暮らしていけるはずです。
逆に男性のほうこそ、コミュニケーションが苦手で、炊事、洗濯などの自活力が乏しい人もまだまだ多い。労働環境が厳しいなか、将来を本当に心配すべきは独身男性なのかもしれません。
そして娘の立場からすれば、まず母親には昔とは時代が違うことを理解してほしい。それから、娘の人生を温かく見守ってほしいですね。
※女性セブン2015年6月25日号