狭き門といわれるテレビ・新聞社に数多くの政治家の子女たちが入社している。故・中川昭一氏(元財務相)と不倫路チュー騒動の中川郁子(ゆうこ)・自民党衆院議員の長女はフジテレビの報道記者。
フジには他にも「超大物」の子息が揃う。中曽根康弘・元首相の孫は政治報道とは無縁で「バラエティ制作センター」の主任を務める。
昨年には岸信夫・自民党衆院議員の息子、つまり安倍首相の甥が入社。本人の希望で報道局に配属されている。局内では「採用試験で出された映像課題に安倍首相を登場させた」という“伝説”も伝わっている。
ちなみに同期には安倍首相の側近である加藤勝信・内閣官房副長官(自民党代議士)の娘もいる(安倍晋太郎氏と加藤六月氏という祖父同士も政界では盟友関係にあった)。例年20人前後のフジテレビの新入社員のうち2人が自民党代議士の子女とはすごい偶然である。
NHKには高村正彦・自民党副総裁の娘、元自民党参院幹事長で現在は維新の党総務会長の片山虎之助・元総務相の息子などが勤務。新聞社では、麻生太郎・財務相の甥が産経新聞で政治部の記者だ。フジを含めていずれも安倍政権との距離が近いメディアとして知られるが、政権批判をしにくくならないか心配になる。
そうした政治家子女がやがて政界へと“里帰り”するケースも多い。小渕優子・前経産相(父は元首相の恵三氏)はTBSで『はなまるマーケット』のADなどを経験した後、父の首相就任を受けて私設秘書となり、2000年に急死した父の後継者としてバッジをつけた。
石原伸晃・前環境相(父は元都知事の慎太郎氏)は日テレ出身、安住淳・元財務相(父は元宮城県牡鹿町長の重彦氏)はNHKで報道記者をしていた。二世議員ではないが、有権者に「うちわ」を配った問題を追及された後に辞任した松島みどり・元法相は朝日新聞出身だ。
そうしたマスコミ出身の政治家が増えることには不安もある。彼らが問題を起こした時に「身内関係」にあった報道機関が疑惑追及の手を緩める危険性を孕んでいるからだ。
マスコミに政権のチェック機能が働いていない現状では、(たぶん)自らの意志と実力でマスコミ入りした政治家子女が、癒着の象徴と受け止められても仕方がないだろう。
※週刊ポスト2015年6月19日号