5月30日に小笠原諸島西方沖で発生したマグニチュード8.1の地震では、一時的とはいえ関東でも交通網が麻痺した。多くの路線で電車が運転を停止せざるを得なくなったのだ。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏が指摘する。
「地下鉄よりも地上を走る路線のほうが危険は大きいと考えられる。特に山手線圏内には耐震性の低い橋脚が多く、地震で崩落すれば車両が脱線や衝突をしかねない」
高速道路にも危険が潜む。老朽化が指摘される首都高で注意すべきは横浜から羽田に向かう「横羽線」だ。
「首都高の中でも海沿いを走るため道路が塩分に浸食され、老朽化が激しく進んでいる」(前出・和田氏)
エクスプラス災害研究所の伊永勉所長によれば、阪神地域でも警戒すべきスポットがあるとして、高級住宅地として知られる兵庫県の山の手地域を挙げる。
「宝塚から西宮、芦屋と続く地域の地質は昨年8月に土砂災害が発生した広島市と同じで非常に脆い。特に雨後に地震が起こると地盤が崩れやすく、住宅数や人口が多い芦屋周辺では広島以上の被害も想定される」
南海トラフ地震の警戒を呼び掛ける政府のアナウンスでは、最大20m超と予想される太平洋沿岸部の津波被害にばかり目が行きがちだ。しかし、実際の被害は「近代都市ならではのリスク」によって増幅することを覚悟しておく必要がある。
※週刊ポスト2015年6月19日号