「500円硬貨が、初めて発行された1982年4月から、これまでに使ったのはせいぜい20枚くらいだと思うんです。今日まで33年間、貯金し続けています」
500円硬貨は重い。だから外で買い物した時のお釣りなどでもらうと、すぐに使ってしまいたくなるけれど、そこを我慢して家の貯金箱に入れてきたと、女優の野際陽子(79才)は語る。
「貯金箱といっても、お菓子の箱等の再利用。500円玉を手にしたら、とにかくその中に入れるんです」
最初はとくに目標や目的があったわけでもなく、なんとなく始めたそうだが、いつの間にか習慣になったと笑う。
「箱がいっぱいになると、どのくらい貯まったのかはわからなくとも、とにかく重い。その重い箱をよっこらしょと抱えて銀行に持っていくんです(笑い)」
銀行では500円玉だけの預金通帳を作り、他の預金とは厳然と区別して、入金専用にしてきた。
「おろしたのは1度だけ。何年前だったかしら。300万円まで貯まったところで、自分のために念願のグランドピアノを買ったんです、少し付け足してね(笑い)」
その時のことを思い出すと、思わず笑みがこぼれる。やった!という達成感と充足感で、幸せに包まれた。500円玉を塵というには、ちょっと抵抗があるけれど、まさに“塵も積もれば山となる”だ。
「それ以来、また貯金箱に入れる、重くなったら銀行に持っていく、を繰り返しているんです」
そして最近、こんなニュースを目にした。
「初期の認知症の人に共通する行動として、買い物をする時に、小銭が財布にあっても、大きなお金で支払うという傾向があるんですって」
年をとり、計算が苦手になってくると、例えば108円とか216円のものを買うのでも千円札、一万円札をパッと1枚出す。確かに楽ではあるけれど…。
「それを見た時、毎日の買い物でお釣りの計算をしながら、お金を出し入れすることが大切だと気がつき、ますます積極的に500円玉を貯めるようになりました」
スーパーで買い物をしたり、タクシーの支払いをする時など、合計金額で500円玉のお釣りがもらえるように考える。支払いが1750円だったら、2250円を出す。そして500円玉のお釣りをもらう。
「レジ前でこうした計算を瞬時にすることで頭は素早く回転。認知症の予防にもなるし、お金も貯まるし、一石二鳥じゃございませんこと(笑い)」
※女性セブン2015年6月25日号