今まで政府は年金制度を変えるとき、「これから年金をもらう世代」の受給額を減らして対応してきた。だが、今回はついに「すでにもらっている世代」の年金をカットし始めた。この6月の年金受給分から「マクロ経済スライド」という仕組みが本格的に発動したのだ。
難しい名前だが、内容は単純。物価が上がっても、それに合わせて受給額を上げず、実質的に年金を減らす仕組みだ。モノの値段が上がっているのに、年金は上がらないわけだから、年金生活者の暮らしは厳しくなる。
現在、年金を受給している世代は今後20年で15~20%程度、現役世代は20%以上も年金が減らされると試算されている。
現在、年金の受給開始年齢は原則的に65才からだ。「年金博士」の異名をとる社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの北村庄吾氏が語る。
「2020年の東京五輪まで景気の上昇が予測されます。そこで政府は、2019年に行われる財政検証(5年に1度の年金の“健康診断”)を機に、『高齢者の雇用が増えた』などの理由をつけ、受給開始年齢を67~68才に引き上げるつもりなのです」(年金博士の北村)
現在、政府は民間企業のサラリーマンや公務員の妻(配偶者)が加入する年金である「第3号被保険者」制度の廃止や縮小を検討している。すると、保険料が免除されていた専業主婦も保険料を負担しなければいけなくなるのだ。
その額はなんと年間18万円。政府は「主婦は保険料を払わずに年金をもらえる。不公平だ」というが、現状でも厳しい懐事情のサラリーマン世帯がそんな負担増に耐えられるのだろうか。
※女性セブン2015年7月2日号