日本でもお馴染みの米カジュアル衣料ブランド「GAP」の経営不振が伝えられている。
5月に発表された第1四半期(2―4月期)決算でも、純利益が前年同期比8%減の2億3900万ドル(約289億円)に沈むなど、減収減益傾向が続いている。そして、ついには全世界売り上げの約7割を稼ぎ出す本拠地、北米の店舗175店を大量閉鎖するという。
GAPといえば、最新の流行を取り入れた服を低価格で販売する「ファストファッション」の先駆け企業として知られる。また、1980年代より素材の調達から企画・開発、製造、物流、販売まですべての流通システムを一貫して手掛ける「SPA(製造小売り)」を導入して急成長を遂げた。
流通コンサルタントで、『ユニクロvsしまむら』などの著書がある月泉博氏が解説する。
「GAPのSPAモデルは、売れる商品だけに絞り込み、納期までのスパンを長くとって大量生産する手法です。計画生産をすることでコスト低減が図れる反面、トレンドに素早く対応できない恐れもあるため、飽きられないベーシックな定番ファッションを揃えました。このやり方を手本にしたといわれるのが、日本の『ユニクロ』です」
ユニクロの成功過程は今さら説明するまでもないだろう。現在、国内店舗数は約850店まで拡大したが、中国、韓国、台湾などアジアを中心とした海外店舗も約710店まで増え続け、もはや世界ブランドとしての地位はGAPに引けを取らない。
カジュアル衣料の頭打ちも叫ばれる中、ユニクロを展開するファーストリテイリングの2015年8月期通期は、過去最高となる1兆6500億円を見込んでいるというから、依然勢いは衰えていない。
では、同じようなビジネスモデルを築いてきたGAPとユニクロはどうして明暗が分かれてしまったのだろうか。
「GAPの人気が落ちている理由は明確です。『ZARA』や『H&M』といった巷で流行っているトレンドを素早く嗅ぎ取り、2週間で商品化して店頭に並べてしまうような、まさにファストフード的なブランドに取って代わられたからです。彼らはGAPとは正反対の多品種少量生産の“第2世代SPA”として勝ちパターンを築きました。
GAPのSPAモデルに近いユニクロは、ややもすると『第一世代から進化していない』と批判されがちですが、決してそんなことはありません。
ユニクロは単にファッション性に固執せず、『ヒートテック』や『エアリズム』に代表される機能性を追求した商品で新しいマーケットを創造しました。GAPのように、いつまでも予定調和的なカジュアル衣料のカテゴリーに留まっておらず、“突き抜けた進化”を遂げてきたのです」(前出・月泉氏)