経済の失速などで日本に追いつくどころか、中国に喰われ始めた韓国では、にわかに反中感情が勢いを増している。
韓国メディアでは世界市場における「中国脅威論」や、中国資本が韓国の土地を買っていることを非難する論調がみられるようになってきた。
長い間、中国の冊封体制(中国の皇帝が周辺国の君主と君臣関係を結ぶことによって作り出された国際秩序)に組み込まれていた韓国の歴史を考えれば、中国企業の伸張に韓国人が恐怖を覚えても不思議ではない。
韓国の反中感情に呼応するように、中国でも嫌韓感情が盛り上がりつつある。
きっかけはMERS禍だ。当局の勧告を無視して韓国人男性が中国広東省に渡航した後に感染が確認されたり、感染が疑われた韓国人女性2人が香港で隔離を拒否したりしたことが火種となり、インターネットには「MERS感染者を送り込む気か」などの書き込みが溢れた。
もともと中韓両国は、領土問題でも歴史認識問題でも紛争のタネを抱えている。1997年に始まった中国の東北部(旧満州)の歴史研究プロジェクト「東北工程」では、高句麗を中国の歴史に組み込んだため、韓国側が激怒し、外交問題に発展した。遡れば、朝鮮戦争では、中国が北朝鮮を支援したために南北統一が果たせなくなり、韓国は数十万人の死者を出した。
それでも、これまではそのような屈辱的な過去があろうと、たとえ中国側が歴史を奪おうと工作しようと、「サムスンは世界一」という誇りが韓国を支えていた。それが経済でも中国に凌駕され、中国に飲み込まれつつある。
※週刊ポスト2015年6月26日号