中国の袁貴仁・教育相が汚職などの腐敗に染まっていたとして、身柄を拘束され取り調べを受けていることが明らかになった。袁氏は今年1月末、全国の教育部門や大学関係者を集めた会議で「西側の価値観を伝える教材を絶対に教室に入れてはならない」「習近平主席の精神を脳に叩き込め」などと指示したことが大きな反響を呼んでいた。
このため、ネット上では、「共産党の価値観と習近平の精神を叩き込んだ結果が腐敗とは、もともとの価値観が間違っていたのでは」との皮肉混じりの書き込みが目立っている。米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト「博訊(ボシュン)」が「特ダネ」として報じた。
袁氏は高校卒業後、故郷・安徽省の中学校教師になり、その後、教育界のトップに上り詰めた異色の経歴を持つことで知られる。文化大革命(1966~1976年)終了後、再開された大学入試を受験、北京師範大学に入学し、同大党委書記などを経て、北京市教育委員会主任などを歴任し教育相に選出された。
いわば叩き上げのテクノクラートで、党や上司への忠誠はケタはずれており、ゴマスリタイプの人物といわれる。
習近平指導部は教育現場で、共産党の指導体制を批判したり、民主主義などの「西側の普遍的価値観」に賛同したりする風潮があるとの危機感を抱き、大学への思想統制を強めていた。このため、袁氏は今年1月、北京で教育部門や大学の関係者を集めて、「大学で党の指導を攻撃し、社会主義を中傷することは決して許さない」などと強い表現で訴えた。
これが国営新華社通信などで報じられると、海外はもとより、中国内からも袁氏の発言に批判が集中。
このような共産党の価値観や習近平主席の指示を遵守する袁氏が、習氏が大々的に展開する反腐敗運動で取り締まられる立場になったことから、このニュースは大きな反響を呼んでいる。
「党と習主席に忠誠を誓うと腐敗に染まるというのは、党と習主席の教えがおかしいからではないか」とか、「中国の教育界の問題点は、袁貴仁のような教育を知らず、党と最高指導者の追従主義者がトップに座っていることに尽きる」との書き込みが目立っている。