「ダイエットや美容のために、長時間半身浴をするのは時間のムダ」
6月7日の『林先生が驚く 初耳学!』(TBS系)で紹介されたそんな驚きの説をめぐって、世の女性から怒りや困惑の声があがっている。
「テレビや雑誌で何度も取り上げていたじゃないですか!」
「長時間でも退屈しないように、わざわざお風呂用のスピーカーまで買ったんですよ?」
「運動が苦手な私でも、これならできると思って続けてきたのに…」
そう思うのも無理はない。これまでの常識が真っ向から否定されてしまったわけなのだから。そもそも半身浴とは、38℃前後の少しぬるめのお湯に腰までつかり、30分から1時間ほどかけてゆっくりと入浴する方法だ。本誌は、同番組に登場した東京都市大学・早坂信哉教授に改めて話を聞いた。
「放送の反響は大きいですよ。半身浴に価値を感じていた女性もたくさんいますから、慎重に対応しないといけない、と少し困惑もしています。
そもそもは名古屋大学の2004年の研究で、40℃のお風呂に、全身浴で10分入浴すると2.8kcal、半身浴で10分だと1.6kcalの消費カロリーという結果が出たことにあります。カロリーの消費量はダイエットに直結する指標ですが、キャラメル1粒が約17kcalですから、半身浴を100分してもキャラメル1粒分すらダイエット効果がないということなんです」
体重や歩く速度にもよるが、ウオーキングの消費カロリーが1時間で160~200kcalだから、やっぱり半身浴だけでやせようとするのは虫がよすぎるみたい。
でも半身浴でたくさん汗をかいて、体内の老廃物を洗い出すデトックス効果を期待する声も大きい。
「これも、あまり意味はありません。老廃物の排出ルートは、便が75%、尿が20%、残りの5%が汗や髪の毛などです。つまり、半身浴をして汗をかいてもそのほとんどはただの水分で、老廃物は少ししか出ないということなんです」(前出・早坂教授)
ペットボトルを浴室に持ち込んで水分補給しながら半身浴をしても、飲んだ水がそのまま外に出ているのとほとんど変わらないというのだ。
「汗をかくこと自体はデトックスになりませんが、間接的には効果があります。入浴することで体温が上昇し、血流がよくなることでたまった老廃物が流れ出します。お湯につかると皮膚表面に水圧がかかり、さらに血の巡りがよくなるんです。その老廃物が最終的に尿などに溶けて体の外に放出されるわけです。しかし、この効果を狙うにも体をまんべんなく温められて、水圧も全体にかかる全身浴のほうがオススメなんです。
心臓や呼吸機能が弱っていたり、年配のかたには全身浴の水圧が負担になるので、半身浴のほうがいいと昔からいわれてきました。しかし、健康的な女性の間でもここまで半身浴がブームになった理由はよくわかりませんね(苦笑)。お風呂をリラックスタイムにしている人も多いですが、全身浴のほうが水の浮力で筋肉が余計な緊張をせず脱力できて、リラックスできるんです。逆に、半身浴だと浮力も少なくリラックスできないということです」(前出・早坂教授)
※女性セブン2015年7月2日