今年の交流戦は、セ・リーグとパ・リーグのリーグの違いが大きくクローズアップされる結果だった。某パ球団のコーチは、巨人戦を終えた後、こんな言葉を口にした。
「昔は巨人の打線といえば名前を見ただけで怖かったけどな。それが今は見る影もない。このチームが首位争いをしているのだから、他も推して知るべし。今のセの打者じゃ、パの投手は打てないよ」
その言葉通り、プロ野球交流戦はパの61勝、セの43勝と、パの圧勝で全日程を終了した。
最高勝率チームとなったのは、12勝6敗のソフトバンク(SB)だ。18試合で90得点をマークした破壊力は、セの投手陣を震え上がらせた。2位以下は日本ハム、西武、楽天、ロッテと続き、セで勝ち越したのは阪神のみという体たらくだった。
その傾向は交流戦だけではない。ここまでのシーズンを通して、両リーグの打撃成績、特にホームラン数の違いが目立つ。交流戦終了時点で、セの238本に対し、パは306本。チーム別に見ると、最多の65本を量産したSBに対し12球団最低の阪神は29本止まりだ(成績は交流戦終了時)。
評論家は、両リーグの野球観の違いを指摘する。近鉄、中日、西武でプレーした金村義明氏が語る。
「パはそれぞれの打者が思い切って振ってくる。セのように1点を取って守り切るような試合はしない。セは進塁打や待てのサインなど“縛り”があるから、パと戦うとこぢんまりと見えてしまいますね」
全球フルスイングを売りにする首位打者の柳田悠岐(SB)をはじめ、リーグ本塁打王の中田翔(日本ハム)や、西武の“おかわり君”こと中村剛也、森友哉……パの豪快なパワーヒッターは、確かにセにいないタイプばかりだ。
「筒香(嘉智)が好調だったから、横浜だけはパワーでいい勝負をするかと期待していたが、その筒香がケガで交流戦を離脱。違いが余計に目立ってしまった」(金村氏)
また、筒香の他にもバレンティン(ヤクルト)やエルドレッド(広島)など長期離脱したホームランバッターが多いことももちろん大きな要因だ。ヤクルト、巨人、阪神で4番を打った広澤克実氏はこう分析する。
「セはアウトになっても走者を進める野球をし、パはダブルプレーになってもいいから振り切る野球。セでは右打者は右方向に打つのがいいバッティングだと思っている選手が多いんです。この固定観念のせいで、セは引っ張れる打者がいなくなりましたね」
イチローの“振り子打法”の生みの親である元オリックスの打撃コーチ・河村健一郎氏も同意見だ。
「阪神や巨人のような人気球団はマスコミなど“外野”の声も気にするのでしょう。そのため選手もコーチもチャンスで失敗して批判されることを過剰に恐れる傾向があります。そのため、とにかく困ったら進塁打、という文化になっている」
※週刊ポスト2015年7月3日号