松山英樹の課題はパッティングだ──今季、常にいわれ続けてきたことだった。その点、今回の『全米オープン』のコースは松山にとって“追い風”となった。
会場の「チェンバーズベイGC」(ワシントン州)の特徴は、まずは約550ヤードのパー4があることからもわかる「長さ」。そしてグリーンに通常のベント芝ではなくフェアウェーと同じ芝(フェスキュー芝)が採用されていることだ。
芝の特徴から転がりが一定ではなく、大きなアンジュレーション(起伏)があり、選手を悩ませた。開幕前に発表されたPGAツアー公式サイトのパワーランキング(優勝予想)で、松山が3位につけたのも、これが理由だった。
「松山はパットに難があるが、このコースでは皆が平等である。スクランブル率(パーオンを逃したときにパー以上で上がる確率)が7位であることが強みだ」(同サイトより)
つまり今大会の結果は、松山の「今後」という意味ではあまり参考にならない。全米ツアーでもトップレベルのショットメーカーである松山にとって、距離はあまり苦にならない。そのうえ“パットが苦手”という最大のビハインドを差っ引いたうえでの成績だからだ。
だがもちろん収穫はある。この大会に出たことで、松山は苦手なパットの克服方法を学べたのではないか、と指摘するのが、プロゴルファーの沼沢聖一氏である。
「パットはどうしても、グリーンに乗せてから入るかどうかを気にしてしまいがちですが、メジャーではその前のアイアンショットでボールをグリーンのどこに置くかが最も大事です。今回のコースのグリーンで、正確なショットの大切さを改めて痛感するはずです」
苦手なパットの克服よりも得意なショットを伸ばすほうが、今後の安定した成績に繋がるという分析だ。難コースを経験し、さらなる成長を遂げるであろう松山の今後が楽しみだ。
※週刊ポスト2015年7月3日号