〈刺激が欲しい〉──今年2月、出会い系サイトに21歳の女子大生の顔写真付きでこんな書き込みがされた。すぐに男たちからメールが殺到し、“彼女”は約30人の男性に〈レイプ願望があります〉といったメッセージとともに「自宅の住所」を伝えた。
その数日後、自宅近辺で見知らぬ男が彼女に声をかけた。しかし、“願望”は現実にならなかった。彼女はレイプ願望など持っておらず、自宅住所を男に送ってもいなかったからである。
6月12日、この女子大生になりすまし、無断で掲示板に写真などを掲載したとして野村証券社員の牧野雅亘容疑者(39)が名誉棄損の疑いで警視庁に逮捕された。捜査関係者がいう。
「牧野は彼女の知人で、ずっと好意を寄せ、繰り返しメールを送ったことでストーカー規制法に基づく警告を受けていた。今回の書き込みは彼女への身勝手な復讐心が原因だったようだ」
幸いにもこのケースは女性に身体的危害が加えられることなく犯人が逮捕されたが、今年3月には北海道で実際に女性が集団強姦されるという事件が起きている。男性会社員がネット掲示板で知人女性へのレイプを呼びかけた。
〈彼女も私もレイプ願望があり、リアルに告知無しで複数レイプしたいと考えています。生外出しでお願いしたく考えており、協力頂ける方いましたらご連絡お待ちしています〉
男はこの書き込みに反応した見ず知らずの男2人と共にその女性を強姦したが、女性は合意しておらず3人は5月に集団強姦の疑いで逮捕・起訴された。呼びかけた男は「交際を断わられた腹いせにやった」と供述している。
ネット上にはさまざまな性癖を満たすことを目的とした出会い系サイトが乱立している。その一種で、“疑似レイプ”のパートナーを誘うアダルト掲示板がこうした「リベンジレイプ」に悪用されている。ネット事情に詳しいジャーナリストの渋井哲也氏がいう。
「本当にやったら犯罪となる痴漢や強姦を疑似的に楽しむ性癖を持つ人たちにとって、ネットの掲示板はパートナーを探す貴重な社交場です。そうした掲示板は2000年代前半から存在していて、当時はごく限られた愛好家だけのものでしたが、スマホの普及もあり、昔よりも利用者の裾野が広がった印象を受けます」
マニア向けの掲示板は無料レンタルサーバーを借りて個人が運営しているケースが多い。「2ちゃんねる」などの大型掲示板であれば、住所や電話番号などの個人情報が掲載されるとユーザーの通報を受けて管理人が削除するケースが多いが、この手の掲示板は管理体制が整っておらず、放置されやすい。それをいいことに、復讐や嫌がらせ目的で女性の個人情報を晒し、あたかもレイプ願望があるように見せかける例が増えている。
「マニアックな掲示板なので、被害者が自分の名前を晒されたことに気付きようがない。一方で書き込みを見た側は“こんな特殊なサイトに名前を載せるくらいだから女性は本気だろう”と思い込んで、たいした確認もせずにその人に殺到する。非常に危険な状態だといえます」(渋井氏)
※週刊ポスト2015年7月3日号