過去の国際調査で年間セックス回数が最下位だった日本で市場開拓をするため、英国のコンドームブランドが「日本の性技」を使った動画を配信した。
髭面の屈強なプロレスラーの男と、豊かな谷間を持つ黒ビキニ姿の女が睨み合う。ゴングが鳴り、取っ組み合いが始まる。男が女の尻を鷲掴みにして油断させたスキに床に組み伏すと、なぜか両者は脚を絡ませ、「松葉崩し」の体位が完成した。
その後も軽快なジャズのリズムに乗って四十八手の体位を次々と決めていく。2分間の動画の最後に、「愛をたくさんつたえよう」の言葉とともにコンドームの新商品が登場する──。
「LOVE48 愛の48手組んでみた」と題されたこの動画は、世界シェア1位を誇る英国のコンドームブランド・デュレックスが新商品「Durex Real Love」のPRで6月1日から配信したもの。
さまざまな体位をプロレス風に見せる斬新なアイデアが話題となり、YouTubeでは16日間で16万回超のアクセスがあった。デュレックスのPR担当者が動画配信の経緯を語る。
「国内の広告専門誌が主催するオンライン動画コンテストに出品するため『愛を正直に伝えたくなる』というテーマで募集しました。約60の作品が集まり、特別賞を受賞したのがこの動画です」
デュレックスは国際的なセックス調査で知られる。2007年の26か国を対象にした調査では、日本は年間セックス回数48回、セックス満足度15%で最下位となり、大きく報じられた。
「日本では『愛は恥ずかしいもの』と思われています。そういう恥ずかしさを忘れて、『自分に正直になって、たくさん愛を伝え合おう』と訴える作品です」(同前)
四十八手は英国にはない日本独自の性技だが、「成立時期は江戸時代だと考えられるが、起源はよくわかっていない」と近現代の文化史に詳しい京都精華大学の斎藤光教授はいう。
「1679年頃に浮世絵師・菱川師宣がさまざまな性愛のバリエーションを描いた『恋のむつごと四十八手』がありますが、交合図は38しかなく、これが四十八手の起源だと特定できる資料はありません。江戸期には日常的な風物をカタログ化する遊びが庶民の間で流行っていたので、その延長線上で体位が開発されたのではないでしょうか」
そうした“誕生の謎”も、現代人の興味を惹いたのかもしれない。
「四十八手という言葉を一度は耳にしたことがあっても実際に見たことがない人がほとんどです。実際にどんなものか興味を持って動画を見た人が多かったのではないでしょうか。動画を見て試したくなっていただければ本望です」(前出・デュレックスPR担当者)
※週刊ポスト2015年7月3日号