夏本番を前に、今年も熱中症対策商戦がヒートアップしている。
中でも、こまめな水分・塩分補給に最適な清涼飲料は、厚労省が熱中症対策で推奨しているナトリウム(食塩に含まれる成分の一部)基準量を満たした商品が年々増加。メーカー関係者によれば、昨夏だけでも「塩」を強調した新飲料が約50種類も登場したという。
“熱中症対策ブランド”開発に果敢にチャレンジしているのがキリンビバレッジだ。
発売から5年目を迎えた『世界のKitchenから』は、これまで期間限定商品を合わせておよそ25種類のさまざまなフレーバーが出たが、「ソルティライチ」のヒットにより、いまや熱中症対策の定番飲料と呼ばれるまでに。同社広報担当者によれば、今年1~5月のシリーズ累計販売も前年比5%増を記録しているという。6月16日には新たにクエン酸入りの「ソルティライムソーダ」が加わった。
ソルティライチが根強く消費者の支持を得られたのはなぜか。飲料総研取締役の宮下和浩氏はこう分析する。
「『世界のKitchenから』が発売された2011年は震災があり、猛暑だったうえに節電を強いられて熱中症対策の必要性が一気に高まりました。単なる水分補給だけでなく塩分も採らなければ命にかかわることもある、との意識と塩分補給の商品訴求がうまくマッチしたといえます」
発売のタイミングが早かっただけではない。夏場や運動時の水分補給として愛飲する人も多い「スポーツドリンク」市場の切り崩しにも成功している。
「『アクエリアス』(日本コカ・コーラ)や『ポカリスエット』(大塚製薬)は、いまでも絶大な人気を誇る巨大なスポーツドリンクブランドですが、その一方で女性を中心に独特なグレープフルーツ系の甘いフレーバーが苦手という人もいます。スッキリした味に仕上げたソルティライチは、徐々にスポドリユーザーをも取り込んでいます」(前出・宮下氏)
夏場の定番飲料に自信を深めるキリンビバレッジは、次なる布石も着々と打つ。6月16日には、沖縄海塩と北海道産の昆布エキスを使った『しお生茶』と、プレミアムブランド『別格』の新シリーズ「塩サイダー 南高梅」を同時に発売した。