チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世はこのほど、東京都内でジャーナリストの相馬勝氏の単独インタビューに応じた。その中でダライ・ラマは、「『宗教はアヘンだ』とマルクスは言ったが、いまや中国共産党こそアヘンに成り下がっている。習近平国家主席は法治のレベルを国際水準まで上げ、一党独裁体制をやめるべきだ」と中国政府を痛烈に批判したが、世界の諸問題についてはどのように見ているのだろう?
──最近、イスラム教徒を中心にテロ事件が頻発しています。日本人も犠牲になっていますが、これをどのようにして解決していけばよいのでしょうか?
「私は大きな怒りと同時に悲しみにうちひしがれています。とくに、テロリズムが信仰と密接につながっていることは大きな悲しみのひとつです。
私はヨルダンで1人のイスラム教徒と会いました。彼は高い教育を受け世界に関する知識にも精通していました。また、私はインドのイスラム教徒についてもよく知っていますが、彼らは社会のなかで複数の宗教が併存しているインドにあって、宗教は共存できることをよく知っています。
マレーシアやインドネシアのイスラム教徒も同様です。イスラム教徒もさまざまな宗教の人々と話し合えば、人間として理解しあえるのです。個人と個人の対話が重要です。宗教的な対立を解決するには面と向かって話し合うしかないのです」
──あなたは最近、オバマ大統領と会っています。その際、オバマ大統領はあなたのことを「良き友人」「慈悲の心を実践する最も素晴らしい人間」と呼んでいます。オバマ大統領に限らず、あなたはたくさんの人から好かれています。その秘訣を教えてください?
「それはスマイルです(笑)。私は正直であり信頼されようと心がけてきました。私は一人の人間として信頼を根本に振る舞ってきました。日本人は往々にして国際会議などで自分の意思を示すことをせず、『イエス』か、『ノー』かがはっきりしないことがあります(笑)。
私は常に笑顔を絶やさずに、リアクションを豊かにしようとしてきました。これが、その秘訣です」
※SAPIO2015年7月号