習近平政権の「反腐敗闘争」が苛烈を極めている。この4月、中国政府は海外逃亡した腐敗官僚など100人の名前や罪名を記したリストを発表。さらに、ICPO(国際刑事警察機構)に国際指名手配を依頼した。なぜ、習近平は血眼になって彼らを追うのか。
収賄、公金横領、詐欺、不正融資……中国政府が公表した「お尋ね者」100人のリストには、全員の顔写真・実名に加え、容疑内容や出生地、逃亡前の役職、逃亡先などが詳しく記載されている。
リストのトップには「中国第一女巨貪(中国一の女性腐敗幹部)」と称される地方官僚(浙江省建設庁副庁長)、楊秀珠が挙げられた。容疑は汚職。2億5000万元(約50億円)もの大金を不正に取得した。楊は2003年、娘夫婦と孫を連れ、上海からシンガポールを経由して米国に逃亡。中国当局はすでに楊の7000万元あまりの資産・不動産を差し押さえ、現金4000万元以上を回収したとしている。
国際指名手配100人のうち男性は77人、女性は23人。約半数は党や政府機関、企業、公的機関の長だった経験をもつ。逃亡先は米国が40人と最も多く、次いでカナダ(26人)、ニュージーランド(11人)、オーストラリア(10人)が続く。アジアではシンガポールやタイ、韓国など。日本は入っていない。
リスト公表後の5月9日には、江西省ハ陽県財政局経済建設係長だった李華波(汚職容疑)が逃亡先のシンガポールで逮捕され、中国に送還された。「お尋ね者」100人のうち、初の逮捕者となった。
李華波は地方の小さな役所の係長にもかかわらず、2006~2010年の間に9400万元(約20億円)を横領。そのうち約3000万元をシンガポールに送金し、賭博や買い物に使ったという。中国政府から協力要請を受けたシンガポール当局が逮捕・起訴したが、すぐに中国に送還した。
しかし、実は今回の100人のほとんどは10年以上前から指名手配されていた。今になって大々的にリストを作り公表したのは、習近平政権が主導する「反腐敗活動」の進展ぶりを国内向けにアピールするためとの見方もある。
※SAPIO2015年7月号