「酒鬼薔薇聖斗」を名乗る人物が犯行声明を出し、1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件。同事件では、14歳の「少年A」が後に逮捕されたが、あれから18年、長い沈黙を破り元少年Aは手記『絶歌』(太田出版)を刊行した。
手記は初版10万部に加え、5万部の増刷が決まったとされる。仮に印税10%とすると、Aは2000万円以上を手にする計算だ。弁護士の紀藤正樹氏は憤りを隠さない。
「これはAと出版社が一種の不当収益を得たことになります。彼があの忌まわしい犯罪を行なっていなければ今回の印税収入はなかったわけですから、結果的に“犯罪で得た収入”です。
凶悪な犯罪行為で有名になり、その知名度を背景に出した本により殺人犯が法外な収入を得るような事態を放置していいはずがありません。ペナルティなども含めて、早急に何らかの法的措置を整備する必要がある」
アメリカでは現在、約40州で犯罪者が自らの事件の暴露などで得た利益は、被害者の救済基金に収めなければならないとする「サムの息子法」が施行されている。
1970年代に世間を騒がせた凶悪犯が事件の内幕を暴露本として出版したり、映画化の権利を売るなどして巨額の利益を得るケースが相次いだためだ。日本でも「サムの息子法」を求める声が今回の手記出版を機に高まっている。
※週刊ポスト2015年7月3日号