今年5月に「アジアナンバー1の富豪」に躍り出た中国人・王健林氏が率いる大連万達集団(ワンダ・グループ)の株をめぐって中国中枢が揺れている。その株が習近平国家主席の姉夫妻や胡錦濤前主席の子息、温家宝前首相の子息らの関連会社に渡っているとの情報がメディアにリークされ、金にまつわる疑惑が急浮上しているのだ。ジャーナリストの相馬勝氏がリポートする。
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わずか10年あまりで、ワンダ・グループがこのような急成長を遂げたことについて、王健林と中国共産党・政府の有力幹部との密接な関係、あるいは両者の癒着が大きく寄与しているとの報道は絶えないが、王も間接的にせよ、それを否定していない。
王は昨年9月、米ハーバード大学で講演し、中国でのビジネス展開について、「中国では企業、とくに民間企業が成功し成長するのは容易ではない。その困難さはアメリカの比ではない」と指摘。
さらに、今年2月、中央テレビ局のインタビューで、王は「中国経済は事実上、官庁主導であり、不動産業は官庁の認可に頼っている。このため、このビジネスで官庁を無視することは不可能だ」と強調し、官との付き合いが王のビジネス展開に非常に重要なことを明らかにしている。
しかし、王はそのうえで、「とはいえ、みなさんに『偽善的であり、うそだろう』と言われるのを承知で申し上げれば、同時に、私は、つまり、賄賂は使っていない」と付け加えている。
その真偽はともかく、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は4月下旬、一面トップで、ワンダ・グループの株が習近平の姉夫妻ら、党最高幹部の近親者の関連企業などに渡っていると伝えた。
それによると、2007年7月、当時の党政治局員、王兆国・全国人民代表大会(全人代)副委員長の子息が経営する北京明豪という企業にグループ株全体の2.5%の株が渡った。9月には党政治局常務委員の賈慶林・中国人民政治協商会議(政協)主席の娘婿の会社が同グループ株全体の1%の株を所有。前者は300万元で、後者は120万元で株を購入しているが、グループ株は昨年12月、香港株式市場に上場しており、現在の株価は当時に比べて1000倍以上に膨れあがっている。
さらに、グループ株は2009年以降、習近平の姉夫妻のほか、胡錦濤前主席の子息、温家宝前首相の子息の関連会社にも渡っている。習近平の姉夫妻の関連会社が得た株は2860万ドルで購入され、2億4000万ドルで売却されており、元値のほぼ10倍だ。同紙によると、これらの数字は政府機関に届け出されている当該企業の書類に記載されている。
※SAPIO2015年7月号