ビジネス

森永卓郎氏 GDPマイナス成長でも株価が上昇した理由を解説

 2014年度は消費税8%への引き上げなどもあり、日本の景気はよくなかった。にもかかわらず日本株は大きく上昇し、2015年段階で日経平均株価も15年ぶりの高値水準で推移している。なぜこうした現象が起こっているのか。経済アナリスト・森永卓郎氏が解説する。

 * * *
 私はこの先1年間ぐらいは、日本経済に久々の晴れ間が広がると見ています。2014年度のGDPは政府経済見通しでマイナス成長になりましたが、今年4月以降は環境がガラッとよくなっているからです。

 2014年度の景気が思わしくなかったのは、消費増税と日銀の金融緩和で物価が大きく上昇したにもかかわらず、賃金がそれに見合うだけ上がらなかったことが要因です。

 しかし、2015年度はまず消費者物価指数の前年比上昇率が落ち着く。昨年秋から原油価格の大幅下落という日本経済にとっての“神風”が吹いていることに加えて、4月以降は消費税引き上げの景気への影響が一巡します。そのため、2015年度の消費者物価の対前年上昇率は限りなくゼロに近づくと推測されます。

 一方で、2015年度の実質所得はプラスになることが確実視されています。春闘の状況を見ると、賃金上昇率は昨年を大幅に上回り、プラス1.5~2%程度になりそうです。また、2014年度は0.7%カットとなった年金受給額も、昨年度は物価上昇率があまりに大きかったため、マクロ経済スライド(*注)の発動を受けても、今年度は0.9%プラスになる。

【*注:マクロ経済スライド/年金受給額を賃金や物価上昇分より抑える仕組み】

 物価上昇率が0%と予想される中、現役世代の賃金もリタイア世代の年金受給額もプラスになるので、実質所得はプラスになるということです。その結果、2015年度の日本の景気は消費増が牽引するかたちで、確実によくなると考えます。

 昨年度はGDPがマイナス成長だったにもかかわらず、日本の株価は上がるという不思議な現象が起こりました。その理由の一つとして考えられるのは、今年度の景気がよくなることが明白だったからです。株価は半年ぐらい先の景気を先取りする。

 さらに、もう一つ理由があります。毎月勤労統計を見ると、昨年の現金給与総額の賃金上昇率は500人以上の事業所が前年比1.8%増、ところが30人未満の中小零細企業は何と0.0%。きれいに明暗が分かれたのです。格差拡大が進む中で、日経平均株価が上昇したのは、日経平均に採用されている225の企業が、いわゆる勝ち組企業ばかりだからです。こうした企業では最高益を更新するところが相次ぐなど、利益拡大が経済全体の拡大ペースを上回っている。そのため、当然のごとく株価も値上がりしたわけです。

※マネーポスト2015年夏号

関連キーワード

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン