外見だけでなく、知的・身体機能において現在の高齢者がかつてに比べて若返っているとする調査結果を日本老年学会が発表した。その傾向は人間の健康的な生活に欠かせない「性機能」にも当てはまる。
現場の医師たちも高齢者の下半身の若返りを実感している。横浜悠愛クリニック理事長の志賀貢医師がいう。
「昔に比べて、今の高齢者は10歳くらい若く見えるが、性機能についてもこの20年で10歳程度若返ったと考えていいでしょう。かつて男性の性機能は65~70歳で低下し始めていたが、今は75~80歳からの低下がほとんど。
私の知り合いの80歳の夫婦は、いまでも定期的にセックスをしています。夫婦で長生きする人は、性生活も長く持続できる傾向がある」
性機能の衰えの始まりが遅くなったために、男性が薬に頼り始める年齢も上昇している。
ED(勃起不全)治療の第一人者、神田医新クリニック院長の横山博美医師によれば、80歳を過ぎてからED治療薬を求めに来る男性が増えているという。
「以前の統計では、80代でも“現役”の男性は2%しかいなかったが、確実にもっと増えているでしょう。
80代でバイアグラを求めに来る人は、見た目もオシャレで若く見え、適度な運動もできる。80歳を過ぎて運動靴で外来に来るなんて、昔はありえませんでしたが、今は90歳以上で自転車をこいでバイアグラを求めに来る方もいるほどです」
医療の進歩も「生涯現役生活」を後押ししている。EDは血液の循環の悪化が原因で起こるほか、前立腺がんの治療も原因になっている。それらの病気はとくに65歳以上になると発症しやすいが、最近の医療の進歩により、性機能の維持が可能になってきた。川崎医科大学泌尿器科学教室教授の永井敦医師の話。
「前立腺がんの手術をすると、勃起神経を傷つけて勃起しなくなってしまいます。最近はそれを嫌がる高齢者が増えているので、勃起機能を残せるように治療したり、手術ではなく放射線治療を選択したりする傾向が強くなっている。
また、前立腺肥大治療薬を飲み続けると、勃起機能が改善し、血管が若返ることも明らかになっています」
性機能の若返りは男性だけではない。神奈川県立汐見台病院産科副科長の早乙女智子医師がいう。
「かつて女性の間には“更年期を過ぎたら性的には終わり”という風潮が強かったのですが、ホルモン充填療法などを行なう人が増えたこともあり、性的に活発な高齢女性は多い。
ホルモン治療だけでなく、若い頃からある程度のセックスの頻度をキープしている人は膣が若く、ホルモンを使わなくても性交渉は可能です。いまは60代、70代でもセックスを続けている女性は珍しくありません」
※週刊ポスト2015年7月3日号