今年でブライダルファッションデザイナー歴50周年を迎えた桂由美さん(83才)。70万組もの夫婦を送り出してきた桂さんが、印象深いカップルについて語る。
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これまで、ブライダルファッションデザイナーとして、たくさんの新郎新婦を見てきましたが、その中でも、特に深く心に刻まれたおふたりがいます。サッカー元日本代表の中山雅史(47才)、生田智子(48才)夫妻がそれ。式をお手伝いする過程で、「このおふたりなら、きっといい結婚生活を送れるはず」と確信した出来事がありました。
当時、生田さんは私のサロンまで、ゴンさんとドレスを選びにいらっしゃったんですが、そこでは体のフォルムが強調されてデコルテの大きく開いたものを選ばれました。これにはゴンさんも大いに賛成し、おふたりとも喜んで帰られました。
ところがその夜のこと。生田さんから電話があり、「ドレスを変更したいのですが、かまわないでしょうか?」とすまなそうに言うのです。
その理由を尋ねると、「セクシーなデザインは、もしかしたらお舅さんが不快に思うかもしれないと、心配になった」とのこと。
これには私は頭が下がる思いでした。お姑さんを気遣う花嫁さんはたくさんいらっしゃいますが、お舅さんのことまで気配りができる女性はそうはいません。結婚には、親や周囲への気配りが大切。私は感服の思いでいっぱいでした。
そしてこの考えは、私がいつも従業員に話してきた“恕(じょ)の精神”に通じる、とも思いました。これは孔子の言葉なのですが、かつて孔子が弟子から“この世でもっとも大切なこと”を聞かれたときに答えたのが“恕”であり、「相手の立場になって物事を考える」という、思いやりの心のことです。
私は常々、夫婦関係はもちろん、人間が生きていく上で、もっとも大切なのはこれではないかと思っていました。
生田さんは、式の主役である自分が着たいものを選ぶのではなく、ドレスを着た自分を見たお舅さんの気持ちを考えられた。これはなかなかできることではありません。
“相手の立場になって考える”という意味では、招待客に楽しんでもらおうというサービス精神たっぷりの結婚式を挙げた、映画コメンテーター有村昆(38才)とフリーキャスター・丸岡いずみ(43才)夫妻も印象深いものでした。
このおふたりの披露宴はご主人の職業に由来し、「シネマ結婚式」がテーマで、ドレスも料理も音楽も、すべて映画にちなんだものでした。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場した車「デロリアン」に乗って新郎新婦が現れた時は、割れんばかりの拍手が会場を包みました。そしてお色直しの時は、『E.T.』をモチーフに自転車で退場。周りのゲストも“こんなに楽しい披露宴は初めて”と口々におっしゃっていて、ゲストを楽しませようという気遣いが細部にまで感じられました。
新郎新婦のご両親も心の底から楽しんでおられ、ご家族の仲の良さもうかがえました。
※女性セブン2015年7月9・16日号