前回、そして今回のサッカー女子W杯での「なでしこジャパン」の活躍は文句なしに称賛に値する。だが課題がないわけではない。若手の人材不足だ。
「2011年にドイツW杯で優勝した後、佐々木則夫監督は3年かけていろんな選手を試してきたが、結局、有吉佐織ぐらいしか見出せなかった。U―19にも有望な選手がいるにはいるが、今回は呼ばれずじまい。W杯に連れていくことに意味があるのに、これでは世代交代は進まないだろう」(サッカージャーナリストの財徳健治氏)
元日本サッカー協会副会長の釜本邦茂氏も、「人材がいないのだから仕方がない。問題は4年後だろう」というように、この問題はそう易しくはない。今回のチームは23人中17人が前回の優勝メンバーだった。背景には日本女子サッカー界の「構造的問題」がある。
日本サッカー協会によれば、2014年度の女子選手の登録数は全国で4万8300人。小学生は1万9380人だが、中学生になると一気に半減して1万人になる。
「2011年のW杯優勝後のなでしこブームで、小学生のサッカー女子は増えた。ところが中学で女子サッカー部のある学校は全国に511校しかない。受け皿がないので、多くの子供が中学に入学する時にほかのスポーツに転向してしまう」(サッカー担当記者)
若年層の厚さは、全体のレベルアップにつながるはずだが、女子サッカーではそうはなっていない。
女子のトップリーグである「なでしこリーグ」にも問題がある。協会はJリーグの各クラブに女子チームを持つよう求めているが、Jクラブ側は「女子は採算が合わない」と敬遠している団体が少なくない。
「なでしこリーグの中で突出して人気があるのは、民間企業が運営し、日本代表選手が多く所属しているINAC神戸。澤穂希ら7人がプロ契約し、残りの選手がセミプロ契約(運営会社の社員として契約。社業に就くことはない)をしているが、ほかのチームではプロ選手はごくわずか。しかもプロでも年収300万円ほどしか稼げない人も珍しくない。
ほとんどがアマチュア選手で別の仕事を持っていて、それも試合や練習で自由に時間が使えることを優先するために、正社員ではなくパートが多い。おのずと収入面が苦しくなり、サッカーに集中できる環境が整わないのが現状です」(女子サッカー関係者)
環境に恵まれた神戸に有望選手が集まるのは必然で、他チームとの戦力差は広がるばかり。これではリーグ戦が盛り上がらない。
※週刊ポスト2015年7月10日号