国交正常化50年を迎え、世界遺産登録問題で態度を軟化させたように見える韓国だが、朴槿恵(パク・クネ)大統領の置かれた立場は複雑だ。国内の経済情勢は上向かないばかりか、昨年のセウォル号の事故対応でも韓国国民から大いに批判された。
歴代の韓国大統領は、支持率が低下してくると反日カードを使って求心力の回復を狙うのが常套手段だったが、朴大統領は就任当初から反日外交一辺倒で、日韓関係はかつてないほど悪化した。それが、ここにきて“宥和転換”のポーズを見せたのはなぜか。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が解説する。
「昨年のセウォル号沈没事件への対応のまずさで20%台に落ちた支持率が、少しずつではありますが持ち直していたところに、MERS(中東呼吸器症候群)の感染拡大が起き、また20%台に戻った。
従来の反日外交の延長では回復できないでしょう。韓国メディアでは、朴大統領の姿勢が外交的孤立を招いているとの論調が出始めています」
朴大統領の反日外交は成果を出せなかった。日本の過去の悪行を世界中で言いふらす「告げ口外交」を展開したが、結果は芳しいものではない。
「韓国政府は、年明けから在米の韓国系ロビー団体を通じて、安倍晋三・首相の4月末訪米時の米議会演説阻止の工作に動いていましたが、完全に失敗した。さらに、安倍首相の米議会演説で歴史問題に関する謝罪の言葉を入れさせようとしたが、それもうまくいかなかった」(黒田氏)
しかも安倍首相に対抗するかのように組んだ6月中旬の訪米日程は、MERS問題で延期となり、「告げ口外交」のカードも失った。
国交正常化50年記念行事に、朴大統領は直前まで出席の予定ではなかった。土壇場で出席を決めた背景には、政権基盤が揺らいでいることへの危機感があるとみていい。
※週刊ポスト2015年7月10日号