近ごろ各地で頻発する山の噴火。昨年9月、御嶽山の登山者が噴火で被災した例が記憶に新しいが、登山中に火山が爆発したら、どのような行動をとったらいいのだろうか。
登山中の噴火で最もリスクが高いのが、噴火口の近くで被災してしまった場合だ。異変を感じたら、即座に上空を見て噴煙の流れる向きを確認し、火山灰を吸い込まないようにして風上に一時避難しよう。火山灰で光が遮断される前に進路を決め、できる限り火口から遠ざかることを優先する。この時、火山灰と並んで厄介なのが、噴火によって飛散した噴石である。噴石はこぶし大から直径2mを超える巨大なものまでさまざま。どこに飛んでくるか、まったく予測ができない。
災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんが語る。
「噴火の避難では、致命傷となる噴石の直撃や、降り注ぐ大量の火山灰から発生する有毒ガスの吸引を最大限まで防御することです。ヘルメットやゴーグル、防塵マスクの用意がないときは、リュックやタオルで頭と背中を噴石から守り、ハンカチで口を覆い火山灰などの吸い込みを防いでください」(以下・「」内同)
逃げる最中に山小屋や避難シェルターがあれば、迅速に建物を目指して進んで行く。もし、建造物がない場合は、火口を背にして、噴石を防げる岩陰などに身を隠す方法もある。ただし、山小屋や避難シェルターは決して避難の最終ゴールではないことを忘れてはいけない。
噴石を最低限防御し、噴煙程度は遮断できるものの、有毒ガスが流れ込んだり、発生した火砕流にのみ込まれたらひとたまりもない。山小屋などでヘルメットやマスク、もしくは身を守る最低限のものを装備したら、噴火の状況を見極めて下山しなければならない。
「下山を始めたら体を防御しながら迅速に麓を目指して進んでください。火砕流や、高温の火山ガスと火山灰からできた火砕サージなどは低地に向かって流れるので谷や沢沿いの移動は危険です。
峠から峰に続く尾根伝いに下山できるコースがあれば、そちらを選択した方が、生還率は高まります」
下山を始めても危険な状況は続く。
特に冬場は、火砕流同様に危険な、マグマによって溶かされた雪が流れ出す融雪泥流が起こる可能性もある。噴火による現象のすべてが生死にかかわるため、麓に着いて安全な場所に移動するまで、緊迫した状況が続くことは肝に銘じておくべきだろう。
「観光登山であっても、火山に登る限り、噴火はいつ起こってもおかしくありません。事前に山の情報をしっかり把握してから出かけてください」
噴火から逃げる術をひとつひとつ積み重ねることで、災害からの生還率をわずかでも高めることができるはずだ。
※女性セブン2015年7月9・16日号