【漫画紹介】『岡崎に捧ぐ(1)』山本さほ/小学館/850円
小学校からの友人・岡崎さんとの懐かしいエピソードをつづったインターネット発マンガ『岡崎に捧ぐ』が話題です。ページをめくると、子供の頃のワクワクした毎日がよみがえります。
もともと『岡崎に捧ぐ』は、友人の結婚を機に作者・山本さほが思い出をマンガにしてWEB上で公開したというとても個人的な作品でした。ところが2014年に発表されるや口コミで人気が広がり、瞬く間に1000万ビューを記録。その後連載場所を『ビッグコミックスペリオール』に移し、会社員だった作者は漫画家に。加筆修正を加えて単行本化したのが本書です。
舞台は約20年前、1990年代の横浜。天真爛漫なゲーム好きの転校生・山本と物静かでちょっとミステリアスな岡崎さんという小学生女子2名が、スーパーファミコンからこっくりさんまで時間を忘れて遊び倒す姿をコミカルに描きます。
たらーんと冷や汗をかいたり、妙な消しゴムを集めたり。小学生の日常をディティールから掘り起こす作者の観察眼と記憶力には脱帽。読んでいると記憶の扉が次々開く楽しさにあふれています。デフォルメが利いた、ちょっと懐かしくてかわいい絵も内容にぴったりです。
「山本さん、大好き。」「私きっと、山本さんの人生の脇役として産まれてきたんだと思う。」と言う岡崎さんの家はすごく汚くて、両親もちょっと変わっています。ギャグと多幸感に織り交ぜて、大人になると見えてくる人生の影の部分が描かれているのが本作の魅力を増しているのかも。何にも負けないトクベツな友情がまばゆく光ります。
(文/横井周子)
※女性セブン2015年7月9・16日号