ビジネス

確定拠出年金 最大の利点は掛金全額が所得控除の対象になる

 今春から物価の伸びほどには年金が増えない「マクロ経済スライド」という制度がスタートし、老後に受け取る公的年金は実質的に目減りしていくことになった。現役世代は自身で老後に備えることが求められる。

 そんな中、老後資金の形成に最も有利な制度のひとつである確定拠出年金(以下DC)を大幅に改正する法律案がこの春、国会に提出された。成立すれば、公的年金に加入するすべての人が利用できる制度になる。

 確定拠出年金には個人が自分で加入する「個人型」と、会社単位で加入する「企業型」があり、今回対象者が拡大されるのは個人型だ。これまでは自営業者など(第1号被保険者)と、勤務先に企業年金のない会社員が対象だったが、これが公務員と専業主婦(主夫、第3号被保険者)、勤め先に企業年金がある会社員にも門戸が広がることになる。

 老後の資金というと多くの人が預貯金や投資信託の積立、個人年金保険商品などを思い浮かべる人も多いだろうが、これらの金融商品よりもまずはDCを検討するのが有利だ。

  DCは、世代間の助け合い制度である国民年金や厚生年金とはしくみが根本的に異なる。自分名義の口座に一定額を積み立てて、自分で対象を決めて投資し、大化けすればすべて自分の利益になるし、失敗すれば自分の資産が減ることになる。すでに投資経験がある人ならむしろなじみやすい年金制度だ。

 その最大のメリットは、掛金全額が所得控除の対象で税金の対象から差し引かれるため、節税しながら資産形成ができることだ。サラリーマンであれば年末調整で積み立てた金額にかかる分の所得税が戻って来る。たとえば、年収680万円の会社員が毎月2万3000円を積み立てると、所得税と住民税を合わせて8万円以上も軽減できる計算だ。

 税制優遇といえば、NISA(少額投資非課税制度)があるが、NISAが非課税となるのは運用益にかかる分の税金だけ。DCも運用益は事実上非課税であることに加え、NISAと異なり何度利益確定して別の商品に乗り換えてもずっと非課税だ。まずはDCの枠を使いきった上で余った資金をNISAに回すか、老後を待たずに使いたいお金でNISAを利用するのが賢い使い方だろう。

 また、NISAは上場株式や株式を対象とする投資信託にしか適用されないが、DCは投資信託を経由で国内外の債券やコモディティ、定期預金まで対象になる。さらにDCでは受け取り時にも公的年金等控除と退職所得控除という優遇を受けられるので、多くの場合、受け取り時も非課税とすることができる。

■文/森田悦子(ファイナンシャルプランナー・ライター)

※マネーポスト2015年夏号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン