「お前、この野郎! 殺してやろうか! 俺と一緒に焼け死ぬか!」
6月30日、東京発新大阪行きの東海道新幹線「のぞみ225号」の先頭車両で焼身自殺を図り、女性1人を巻き添えにした林崎春生容疑者(71)はつい最近、役所の納税課や年金担当の職員相手にこう怒鳴り散らしたという。40年来の付き合いという友人男性が語る。
「昨年末まで都内の清掃会社でゴミ収集車の運転手をしていたが、“一緒に働く若い連中についていけない”といって辞めてしまった。最近では“仕事を辞めてから、税金の請求が来ても払えない”“役所の人間はカネが払えないなら死んでしまえといわんばかりの態度だ”と愚痴をこぼしていた」
林崎容疑者は50年以上、東京・杉並区の西荻窪周辺で暮らしていた。
「彼は20代の頃は西荻窪周辺の飲み屋では人気の“流し”。ギターを抱えて夜の街を歩いて、演歌を歌っていた。十八番は北島三郎の『兄弟仁義』。『なみだ船』や『歩』なんかもよく歌っていて、コブシの使い方が上手かった。3曲歌って1000円だったかな。だけど、必ず1曲サービスして4曲歌ってたことはよく覚えてるよ」(別の知人男性)
カラオケが普及し始めると流しの仕事が減り、杉並区の鉄工所に勤め始めた。前出の友人男性が続ける。
「その頃は山菜採りが趣味で、私も何度も一緒に車で長野の山に出掛け、麓から頂上まで四季の山菜を採って歩いた。野球も好きで、私の2人の息子に教えてくれたこともあった。鉄工所が倒産すると、幼稚園バスの運転手に転職。業務でもないのに園庭の草むしりをやっていて、子供たちにもなつかれていた」
走る新幹線の運転席のすぐ後ろで身体に火をつけた今回の事件は、さらなる大惨事を招く危険があった。かつては夜の町で人気を博し、子供好きでもあった男の末路は許されざるものだった。
※週刊ポスト2015年7月17・24日号