美容整形はかなり普及したと言われているが、いまだ公表する一般人は少ない。その一方で全身整形を公表しているヴァニラや、美容整形している様子を報告する読者モデルのブログへの関心はとても高い。多くの人が持つ顔を変えたいという欲望について、正面から取り組んだのが北条かや氏の『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)だ。整形へ興味を抱いた原点について、北条氏に聞いた。
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――美容整形というものに関心をもつようになったきっかけは?
北条かや(以下、北条):作家の中村うさぎさんのファンで、2002年ごろから集中的に書かれていた整形のエピソードをつづったエッセイも大好きで読み込んでいました。うさぎさん自身が整形をしていくのですが、最初はプチ整形やアートメイクで気が済むかと思ったら、どんどんハマっていき、ついに豊胸やリフトアップなど全身に及んでいった。それを全部公開していく文章が素晴らしかったんです。
――そのまま整形への興味が強まったのですか?
北条:中村さんの影響もありますが、私自身の研究テーマでもあります。社会学に「身体社会学」という分野があり、そこではピアッシングやボディビル、美容整形など身体にまつわる様々な研究がされています。身体社会学に興味をもった20歳ごろ、うさぎさんのエッセイに触発されてプチ整形にあたるボトックス注射を頬にしました。うさぎさんと同じように記録をつけ、どんなふうに意識が変化していくのか確かめたんです。
――体験してみて、どんな発見が?
北条:まず、手軽なことに驚きました。そして変化したあとの顔を元からこういう顔だったと思ってしまうことにびっくりしました。数か月で効果が消えるプチ整形とはいえ、どんどん頬の筋肉が委縮して顔が小さくなり輪郭がシャープになってゆく。結果的に、頬のお肉が顎の一か所にたまって不自然になる時期もあったのですが、決して美しいとは言えない、その様子も興味深かったですね。
――以前の顔がなかったことになるんですか。
北条:人間の適応力って、すごいですよね。中村うさぎさんのエッセイの通り、本当に以前の顔をすぐに忘れちゃうんですよ。体験するまでは本当に忘れてしまうのだろうかと半信半疑でしたが、こんなに見事に前の顔を忘れるとはと驚きました。