悩みの種はケガだけではない。左足の負傷によりウィンブルドンは無念の棄権となった錦織圭(25)の今後に暗雲が立ちこめている。
昨今のプレーの内容そのものは悪くない。
「弱点といわれていたサーブが格段に良くなり、サービスエースが何本も決まるようになった。得意なストローク戦でも、後ろに下がるのではなくベースラインに近い位置でボールを叩けるようになり、強さが増している」(テニス誌記者)
だが、1回戦で格下の選手に苦戦するなど“進化”に見合うだけの強さを発揮できていないのも事実だ。なぜか。
「昨年の全米オープン準優勝をきっかけに、世界の錦織研究が相当に進んでいる。例えば全米の準々決勝で下したワウリンカには、今年の全豪の準々決勝でストレート負けを喫してしまった。
この試合、ワウリンカはストローク戦で錦織が前に出られないよう、ボールをコースの外に逃がすようなサーブやショットを徹底していた。錦織のドロップショットも完全に読み切っていて、全米とはまったく違う戦い方だった。錦織はワウリンカの“錦織対策”に対応できなかった」(スポーツ紙デスク)
ストローク戦でサイドを狙わずに、あえてセンターに打ち返す選手も現われた。
「これで角度をつけたストロークを封じることができる。センターから両サイドの厳しいコースにショットを打つのはリスクが高く、錦織はなかなか決めることができずに焦ってしまう。ラリーの得意な錦織の心理を利用した巧妙な作戦です」(テニス誌記者)
ランキング1位のジョコビッチは、全米後の会見でこう語っていた。
「錦織はトップの戦いに足を踏み入れたばかり。この世界の戦いは別次元だ」
世界一への道は険しいが、これまで見事なプレーを見せてきた錦織ならば乗り越えられるはず。今後の“別次元”の戦いに期待したい。
※週刊ポスト2015年7月17・24日号