日本の産業革命施設の世界遺産登録阻止に動いていた韓国が、6月21日に開催された日韓外相会談で「掌返し」を見せ、「明治日本の産業革命遺産」23施設と韓国側の登録要請案件について「ともに協力して、登録できるよう努力すること」で一致した。『悪韓論』(新潮新書)等の著書があるジャーナリストの室谷克実氏が、韓国の真意を読み解く。
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韓国の文化財はというと日本に比べて乏しい。そもそも韓国では歴史的な文化財を保護・保全する意識が低く、それらを重んじる価値観すらない。
たとえば、韓国の世界遺産である、慶州市の仏国寺にある石窟庵は、日本統治時代の1900年代初め、日本人の郵便配達員によって偶然発見されたもので、その寺の僧侶はその存在を知らなかった。
近代以降の産業遺産も同様だ。現存する最古の紡績工場である江華島の朝陽紡績工場跡は、朽ちるに任せた状態だ。
韓国には誇れる産業遺産がないという嫉妬から、日本の世界遺産登録に歴史問題を持ち出して反対しているのだと見る向きもある。
しかし、それ以上に、日本に“外交3連敗”だけは喫したくないという動機のほうが強かったのだろう。
現在韓国は日中韓3か国首脳会談を提案しているが、それが実現されないうちに、今年4月のバンドン会議(アジア・アフリカ会議)で2回目の日中首脳会談が行われ面子を潰された。
4月30日の安倍総理による米議会演説では、韓国政府が画策した演説阻止が聞き入れられなかったばかりか、「アジアへの反省と慰安婦への謝罪を盛り込め」という条件闘争も実らなかった。
今度も明確な形で負けたら、朴槿恵政権は「対日外交3連敗」で、レイムダックは腰ふりすらできなくなり沈むだけだ。勝ったら、日本には「もう韓国は許さない」の声が満ちあふれ、どんな報復に遭うかもしれない。
韓国は現在、中東呼吸器症候群(MERS)感染防止に失敗するなど、いいことなし。何とか対日で光明を見付けようとしたのが、国交正常化50周年に託けた掌返しだった。
それにしても、きのうまで反日告げ口外交をしていた外相が、翌日には「日韓友好」の旗を持って乗り込んでくるこの鉄面皮ぶりは、日本外交が大いに学ぶべきことに違いない。
※SAPIO2015年8月号