中国で大規模な摘発が続く中、続々とその「欲とカネ」の実態が明らかになっている。拓殖大学教授の富坂聡氏が指摘する。
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東莞市の一斉手入れ以来となる巨大な売春グループが摘発され話題となっている。問題を伝えたのは『現代金報』(2015年6月20日)である。
タイトルは、〈温州 全国最大の売春グレープ摘発、女子大生が韓国に整形旅行 目的はハーフ美女になるため〉である。
グループの特徴は高級娼婦をそろえ、国内のファイブスターの高級ホテルにモデル級の美女を派遣することだった。約半年間かけて行われた内偵の末分かったのは、組織に所属する女性は1000名以上にも上り、派遣先のホテルは、香港をはじめマカオ、北京、上海、廈門、重慶、哈爾浜、青島、福州、杭州、寧波、温州のそれぞれファイブスターの高級ホテルだったということだ。
北京の夕刊紙記者が語る。
「組織の〝ウリ〟は、何といってもモデル級でかつ若い女性をたくさん抱えていたということです。いったいどうやって女性を見つけていたのかが話題となりましたが、グループをまとめていた朱というリーダーの証言によれば、女性のほとんどは香港でリクルートしたというのです。香港で買い物しているときであれば『あれも欲しい』、『これも欲しい』と自然に物欲が高まります。
そうしたタイミングで感じ良い女性をうまく女性たちに接近させ、羽振り良く高級レストランに招待します。食事をしながら、自分がいかに儲けているかを話し、それから『あなたにもチャンスがある』と誘う方法だそうです。旅先で気を許していることもあり、たいていの女性は誘われるままに売春の世界に引き込まれるというのです」
彼女たちはホテルの出入りするに際して高級ブランドの服を身に付けることが義務付けられていたというが、そのせいもあって値段は高額。エスコートは最低でも3000元(約6万円)。高い場合には1万元(20万円)を超えていたという。
「高級売春組織のなかでの競争はし烈で、美貌を保つための努力も話題となりました。今回捕まった女性のなかには、ハーフに似せるための整形手術のために5回も韓国に通った者もいたといいます」
東莞の大摘発以降、中国の性産業は窮地に追いやられている。その事情は拙著『中国狂乱の「歓楽街」』(中経出版)に書いたが、当局はまだまだ手を緩めていないようだ。