アベノミクスがスタートするまで日本経済は長くデフレに苦しんできたが、現在、政府・日銀は年2%の物価上昇目標を打ち出すインフレ政策へと舵を切っている。まだインフレを実感している国民は少ないかもしれないが、海外に目を向けるとすでにインフレが進行している。家計の見直し相談センターの藤川太氏が、欧州のインフレ社会の実態とその背景について解説する。
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日本国内にいるとなかなか実感できないかもしれませんが、海外に出ると、国境を超えてグローバルスタンダードの波が押し寄せていることを痛感させられます。
先日、欧州各国を訪れる機会がありました。英国、あるいはEU(欧州連合)のなかでは勝ち組とされるドイツでも、「インフレ」が庶民の生活に重くのしかかっていることを目の当たりにしました。
とりわけ物価の高さを如実に示しているのが不動産価格でしょう。英国では、首都ロンドンから車で2時間以上かかるような田舎町でも不動産価格が高騰していました。街に1軒だけある不動産屋を覗くと、郊外によく見られる一戸建てが5000万~8000万円ほどで売り出されていました。そこはいかにものどかな雰囲気で、コーヒーショップが2軒ある以外は、スーパーなども見当たりません。なのに、日本でいえば都心のちょっとした戸建ての販売価格に匹敵するほどなのです。
現地の住民に話を聞くと、「高すぎて、とても買えない」「もともと住んでいた人が帰りたいと思っても戻れない」といった声ばかり。そんな高い値段で誰が買っているかというと、金融機関や企業、ファンド、そして中国人をはじめとする外国人だそうです。ロンドンの中心街ともなれば億を超える物件がザラなのはいうまでもありませんが、こんな田舎の一軒家までもが実需ではなく、投資用物件として買われているのです。これを資産バブルといわずしてなんと表現すればいいのでしょうか。