国内

亀井静香氏「晋三君は一内閣の解釈見直しだけで進めている」

 作家の百田尚樹氏が講師を務めた自民党議員の勉強会での、「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。われわれ政治家、ましてや安倍首相にはいえないが、文化人、民間人が経団連に働きかけて欲しい」という大西英男・代議士の“懲らしめ”発言に批判が集まっている。
 
 歴史に学ばない議員たちは知らないだろうが、かつて陸軍は「悪い支那を懲らしめる」と喧伝して泥沼の日中戦争に突入していった。

 自民党は昨年の総選挙前、安倍晋三・首相側近の萩生田光一・総裁特別補佐がNHKや在京キー局に「公平な報道」を求める文書を渡して報道に圧力をかけたことが問題になったが、政権与党の代議士が、国民を扇動して電凸(でんとつ)を行なわせようとしたり、文化人を通じて番組スポンサーに圧力をかけさせようとは、すでに危険な「権力の暴走」が始まっていると見るべきだ。

 名うての改憲論者として知られる自民党OBたちが安保法案に反対の声をあげているのは首相の政治手法への危機感からだ。その1人、亀井静香・元自民党政調会長が語る。

「集団的自衛権の行使容認という国の根幹に関わる見直しを行なうなら、手間ひまがかかっても憲法改正手続きを進め、国民投票で国民の意思を問わなければならない。

 だが、晋三君は一内閣の判断による憲法解釈見直しだけでドンドンやろうとしている。以前の自民党であれば党内から強い反対論が出ててんやわんやの騒ぎになった。

 ところが、今の自民党は総理の手法に対して反対論が出ない。議員はポストが欲しいし、派閥領袖も派閥の議員たちがポストから干されるのが怖いからものがいえないイエスマンばかりになった」

 安倍首相の行動原理をひとことでいえば、ネットの「いいね!」政治だ。安倍首相のフェイスブックでは中国や韓国に強硬姿勢を取ると、「いいね!」のボタンが押される。若い女性からのファンレターをお菓子の空き缶に大切に保管し、時折、周囲に自慢してみせることで知られる安倍氏は、「フェイスブックの書き込みに、『いいね!』が集まると“多いなァ”と非常に喜んで顔をゆるめている」(側近)という。

 一部の極端な思想の支持者が喜べば自分が国民に支持されたと思い込み、一層、中韓との非難の応酬にはまり込んでいく。

 首相は二言目には「国民の安全を守るため」と安保法案の必要性を語るが、そんな勇ましいマッチョな性格ではそもそもない。だからこそ、この無理筋の法案なのだ。

※週刊ポスト2015年7月17・24日号

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