朴槿恵大統領が絶体絶命のピンチに追い込まれている。韓国経済の柱である輸出産業がウォン高で低迷し、猛威を振るうMERS(中東呼吸器症候群)は未だ収束の気配を見せない。そうしたなかで、朴大統領の支持率は急降下し、歴代大統領の中で最低の29.1%(韓国ギャラップ社・6月19日調査)となった。
死者・行方不明者300人以上の犠牲者を出した昨年4月の「セウォル号」事故以降、韓国民は朴大統領への不信感を募らせていった。興味深いのは、その後の韓国メディアが朴政権の無策を批判しつつ、日本当局の危機管理能力の高さを評価したことだ。
事故直後の『朝鮮日報』は、「日本は他国の災害についての白書まで作成している」とした上で、韓国・大邱(テグ)市の地下鉄火災事故(2003年2月)を調査した日本当局が、この事故を教訓に安全対策を強化したことを紹介した。
「(日本は)複数の避難経路を設定し、駅のホームの売店なども燃えにくい素材を用いて造り替えた」(2014年4月27日)
また同紙は、今年5月に発生したMERSの関連報道で、「日本の第一人者に聞く 日本ならどう対応したか」(6月5日)と題する特集を掲載。日本の医師2名を取材し、「日本では2年前にMERSを感染症指定しマニュアルを作成していた」ことや「韓国側のマニュアルに不備がある」ことを報じた。
自然災害対策でも「日本を見習おう」と呼びかけるメディアの論調が目立つ。2014年5月7日の『東亜日報』は、「阪神大震災後システム大手術」と題し、震災後に日本政府が24時間対応の危機管理センターや災害派遣医療チームを新設したこと、国と自治体、市民が一丸となり災害に備えている様子などを詳報した。
※SAPIO2015年8月号