東京・湯島辺りにあるバー『ホワイト レインボー』で、毎週日曜日深夜、ママ(宮沢りえ、42才)とタモリ(69才)とゲストが愉快な宴を繰り広げる。その30分間の宴を放送する番組が『ヨルタモリ』だ。
毎週欠かさず見ているという、上智大学教授(メディア論)の碓井広義さんは言う。
「お店を舞台にしたトーク番組は少なくない。でも、この番組に出るゲストは、他では一切しない話をしたり、他では見せない表情をしたりする。例えば、沢尻エリカさんはアイスランドに行ってオーロラを見たという話をしていました。そういう意外な面を見られるのは『ヨルタモリ』だけです」
その雰囲気を作っているのがタモリと宮沢りえだ。
「『笑っていいとも!』では受け手だったタモリさんが前面に出て楽しんでいる。1980年代、タモリさんが音楽やコントをしていた番組『今夜は最高!』(日本テレビ系)を彷彿とさせます。軽く一杯飲みながら、見ていられる。大人の贅沢な時間です」(碓井さん)
「宮沢りえが素晴らしい。いろんな人生経験があってそれを隠さずに話してくれる。男性の理想とするバーのママそのままです。
かつて貴乃花親方(42才)と婚約解消した過去を持つ彼女が、石橋貴明(53才)がゲストのときに『こっちのタカにしときゃよかったのに』と言われて、照れながら爆笑していた。酸いも甘いも経験したすごくいいママです」(コラムニストのペリー荻野さん)
毎週ひょいと突然やって来るゲストとの絡みはもちろん、その間に流れるコーナーも『ヨルタモリ』の魅力のひとつだ。いくつか紹介しよう。
生演奏をバックに、外国人歌手に扮したタモリが、いかにもそれらしいデタラメな外国語で歌い上げる。
「タモリさんがサルサやったりレゲエやったりするコーナーです。例えば、カルロス・カズヨシ・ロドリゲスとかおかしな名前を名乗って、実際に歌ったり踊ったりします。すごいチープなかつらでタモリさんはやっているのに、音楽のレベルは高い」(ペリーさん)
『世界の車窓から』(テレビ朝日系)のパロディー。取り上げる路線は地下鉄。毎回地上駅から発車するものの、すぐに地下にもぐり、真っ暗な車窓をタモリが解説する。
「電車はタモリさんの趣味のひとつです。東西線の回では、中野駅から落合駅の間は、初めは外の景色が見えているけど、地下に入っていく。それを、もっともらしいナレーションをつけて、真っ暗な車窓を見せ続けて笑わせるって、こんなおもしろい遊びはない。一瞬、放送事故かと間違えるくらい、画面が真っ暗になります(笑い)」(碓井さん)
『視点・論点』(NHK)のパロディー。鉄道駅の始発駅・終着駅に焦点をあて、終着駅への思いをタモリが語る。
「いかにもマニアックで、鉄道マニアが喜びそうなコーナーです。京急線の三崎口駅の場合は、路線が先に続いていて、トンネルまで造られているにもかかわらず、諸般の理由で計画が中止になったというナレーションが入ります。本来終点になるはずではなかった駅の車止めを、タモリさんがドラマティックに解説するのがおもしろい」(碓井さん)
※女性セブン2015年7月23日号