最近、広くその名が知れ渡った「モラルハラスメント」。モラハラと呼ばれるそれは、果たしてどこまで理解されているのだろう。モラハラや虐待について詳しいノンフィクション作家の黒川祥子さんと、三船美佳が高橋ジョージとの離婚裁判に証拠資料として提出した『カウンセラーが語るモラルハラスメント』著者でカウンセラーの谷本惠美さんに討論していただいた。
黒川:高橋ジョージさんと三船美佳さんの離婚騒動以降、モラハラという言葉が一気に広まりました。でも、まだまだ誤解されている部分も多いと思うんですが、どう思いますか?
谷本:本当にその通りで、亭主関白からちょっと言葉が乱暴な人まですべてモラハラと理解されていますよね。実際には、モラハラはそれらとは全然違います。男らしさを誇示するために、妻に対していばる、言葉遣いが荒いなどという男性は少なくありませんが、彼らは乱暴なりに、相手の立場を理解しています。
しかしモラハラは、自分自身の心の葛藤、イライラやストレスを処理するために、相手をコントロールするんです。だから、罵ったりといった激しいものよりもむしろ、小さなストレスが妻の側に溜まっていって、いつしか自分の価値観がなくなっていく。すごく静かなんですが、罵倒よりも怖いものだと私は思っています。
黒川:モラハラでは、被害者は自分が悪いと思い込まされるように仕向けられていくから、本当に苦しいんですよね。谷本さんに相談する人も皆さん、やはり苦しんでおられるかたが多いですか?
谷本:多いですね。罵倒や暴力だったら「これはおかしい」「もう離れるべきだ」と気づきやすいんですが、そうじゃないですから、精神的にダメージがより深くなっていくんです。
黒川:大学教授のような社会的地位がある人が、実はモラハラの加害者になっていると、以前聞いたことがありますが、本当ですか?
谷本:実際、ご主人がお医者さんだったり、弁護士さんだったりする人は、私のところにいらっしゃるかたでも多いです。そして、そういう人たちというのはみんな、暴力は振るわないんですよ。
黒川:何一つ、自分に非はないという形をとりながら、言葉で、あるいは無視することで、妻を追い詰めるわけですね。
谷本:そうなんです。そして妻の側は何で私はこんなに自信がないんだろうとなったときに、ふとネットの掲示板などで見て、ひどい仕打ちは受けてないけれども、もしかしたら私もモラハラを受けているのではと気づく。
※女性セブン2015年7月23日号