世界でいま、もっとも頭を痛めているのが中国とロシアの傍若無人ぶりだろう。そのロシアのプーチン大統領へ安倍晋三首相は訪日ラブコールを何度も送り、会談を希望している。これは国の指導者としてどれほど愚かなことか、作家の落合信彦氏が解説する。
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いま、アメリカやヨーロッパなどの民主主義国家では国内世論を気にしてリーダーたちは身動きが取れない。片や中国やロシアでは習近平とプーチンという独裁者が傍若無人に振る舞っている。とはいえ、中国とロシアは似ているようで違う。
中国共産党という一党独裁システムの上で権力を握る習近平に対し、ロシアはソビエト連邦の崩壊によってすでにシステムとしての独裁体制はなくなっている。本来であれば普通の民主主義国家に向かうところを、プーチンという個人の力で独裁化しているだけなのだ。ロシアの国民は独裁に馴れきってしまっている。インテレクチュアル(知的)なゴルバチョフより男っぽいプーチンや荒っぽいエリツィンを祭り上げる不思議な国民なのだ。
果たしてプーチンはどこまで、この危険な行動をエスカレートしていくのか。経済が悪化すればするほど、国内の支持を保つために過激でマッチョな行動に走らざるを得なくなる。そんなときに、欧米の足並みを乱すようにひとりプーチンにすり寄る安倍は、なんと思慮の足りない人間だろうか。愚かにもほどがある。
さて、プーチンをここまでつけ上がらせたのはいったい誰なのか。アメリカのオバマ大統領にほかならない。なぜ政治・外交・経済も知らない彼が大統領になってしまったのか。答えは簡単、アメリカ国民が選んだからだ。
黒人の95%、ヒスパニックの大部分プラス貧困層の白人は、オバマの「チェンジ」という言葉を信じて彼に投票した。確かに「チェンジ」はあった。かつてのアメリカは消えてどうしようもない国に陥り、世界の信頼や尊敬を失ってしまった。国民は世界ナンバーワンの国家を破壊してしまったのだ。これは民主主義の一つの落とし穴である。
※SAPIO2015年8月号