中国オリンピック委員会の副主席を務める肖天・国家体育総局副局長(次官級)が「重大な規律違反と違法行為の疑い」で中国共産党中央規律検査委員会の取り調べを受けていることが分かった。
肖氏は2005年から現職で、2012年のロンドン五輪では中国選手団の副団長を務めており、中国のスポーツ界に強い影響力を持つ。それだけに今後、中国のスポーツ界全体を巻き込み、大規模な腐敗摘発に発展するのは必至との見方が出ている。
中国のスポーツ界では大会開催の決定や運営団体の選定、審判の選出、さらも参加選手の選定などをめぐって、スポーツ行政の頂点にある国家体育総局が各種競技の運営団体などに細かく指示を出し、それに従わない場合、大会そのものを中止にするなど、その権限の大きさを見せつけてきた。その過程で、多額の賄賂が発生するケースもあった。
その最たるものがサッカー界だ。1999年から2009年にかけて、国家体育総局サッカー管理センターの主任兼中国サッカー協会副主席を務めた南勇氏が2013年4月、収賄罪で懲役10年6月の判決を言い渡された。
南氏は1999年には中国スーパーリーグ1部からの降格の危機にあった遼寧省瀋陽のチームから残留工作を依頼され、40万元(約800万円)の賄賂を受け取るなど、約10年間で119万元(約2380万円)を手にしていたという。
習近平国家主席は大のサッカーファンで、2023年までの任期中に、サッカーのワールドカップを中国で開催し、中国代表チームが優勝することを悲願としていると伝えられる。それだけに、事態を重く見て、「サッカー界のみならず、スポーツ界全体の不正の糾明を指示した」と米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト「博聞(ボウェン)」は伝えている。
昨年4月に党中央規律検査委の腐敗調査チームがスポーツ関係機関に派遣された結果、中国国家水泳センター・シンクロナイズドスイミング部の兪麗前部長が判定の操作や収賄などの不正に関わったとの疑惑が浮上するなど、腐敗が他の競技にも波及していることが明らかになっている。
このため、博聞は北京の消息筋の話として、「スポーツ行政のナンバー2である肖天副局長の取り調べは、中国のスポーツ界全体の不正が暴かれるきっかけで、大がかりな不正摘発が予想される」と報じている。