今でこそ「品格と節度」(新聞倫理綱領)を掲げる新聞だが、戦前までは事情が違った。明治、大正、昭和初期の新聞をめくると、「朝日」「読売」などの全国紙も売り物の目玉記事は、男と女のスキャンダル。現代の週刊誌と見紛うほどの色っぽい仰天記事にあふれているのだ。『三面記事から見る戦前のエロ事件』(彩図社刊)の著者・橋本玉泉氏協力の元、当時の新聞を飾った「エロ・グロ」事件を厳選した。
【女湯のぞきがやめられない エロ住職が“出入禁止”に(明治13年4月22日・読売新聞)】
東京・本所林町(現・墨田区)にある寺の住職は、湯屋で女湯を覗くのが〈何よりの道楽〉だった。この住職が入浴に訪れると「スケベ和尚が来た」と常連客が嫌がり、さっさと湯から上がって帰ってしまうため、ホトホト困った湯屋の主人は住職に入浴拒否を言い渡した。
別の湯屋も出入禁止となった住職が身の不幸を嘆いていると、寺の近くに温泉ができ、ここは女湯がよく見えるらしいとの「朗報」が届く。これに住職は〈涎を流して悦び〉、開業と同時に馳せ参じた。その場では風邪を引くことも忘れて、ひたすら女湯を見つめていたとのこと。現代ならば即逮捕を免れない醜聞である。
※SAPIO2015年8月号